【視点】岸田首相のウクライナ訪問 目的はキエフとの連帯か、自分の支持率の救済か?

岸田文雄首相は、キエフでウクライナのゼレンスキー大統領と会談を行う。岸田首相のウクライナ訪問は、中国の習近平国家主席がモスクワでプーチン大統領と会談するのと同時期に行われることになる。
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これは偶然の一致ではないだろう。ウクライナでの特殊軍事作戦開始以来、この1年の間にG7の首脳は全員キエフを訪問したが、その中で岸田氏は唯一、キエフ訪問の機会を見つけられないままだった。
これは日本がついに欧米の圧力に屈し、経済的利益を損なってまで露中と対立するという、自国に不利な流れに一層深く巻き込まれたことを意味するのだろうか。スプートニクは、何がきっかけとなって岸田首相がこの時期にウクライナを訪問することになったのかを検証した。

G7、イメージを救済しようとする岸田氏

モスクワ国立国際関係大学、東洋学部長で政治学者のドミトリー・ストレリツォフ氏は、日本では岸田首相のウクライナ訪問に対して、賛成側も反対する側もそれぞれ十分な論拠が出揃っていたものの、欧米ではウクライナ危機の議題は圧倒的に優勢であるために、反対の声には次第に耳が傾けられなくなったとの見解を表している。

「岸田氏はどんな手段を使っても国民に点稼ぎをして、支持率を維持しなければならないというまさにその時に優柔不断だと批判を浴びることになった。なぜなら、日本では今、岸田氏自身が提唱した『新しい資本主義』のコンセプトをはじめ、経済政策に問題があるからだ。コンセプトは岸田首相が公約に掲げているにもかかわらず、うまく機能していない。訪問や会談を通じて外交政策の舞台で自分のイメージを立て直すことが岸田氏にこれほど重要なのは、これが理由だ。(訪問などでイメージアップを図ろうとするのは:編集)日本の首相らにはほぼトラディションとなっている」

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一方で、岸田氏は有権者に対して、欧米との連帯は必要不可欠と位置づけている。日本人には一種、ウクライナ紛争は中国との対立の序章という考えが強要されている状態だ。

「つまり、日本がウクライナを支援しないなら、欧米の同盟国は東アジア情勢が緊張化した時には日本に『救いの手』を差し伸べないという発想だ。岸田首相はこの考えを繰り返しはっきりと表明している。しかも欧米の方からは、岸田氏の優柔不断さは一種の奇行と反感として受け止められてしまった。このことから岸田首相は今回の訪問で、日本はウクライナ危機を他人事とは扱っていませんよという信号を欧米に送り、何とか自分の体面を保とうとするだろう」

しかも、岸田首相は自分のウクライナ訪問が中国の国家元首のロシア訪問の時期と重なったことで、欧米での自分のイメージにおまけの点が稼げる。

「この習近平国家主席とプーチン大統領の会談は中国側によって急遽準備されたものではないか。それに比べて岸田氏のほうは、何度もキエフを訪問すると言っておきながら、安全保障を主な理由として決心がつかなかった。注目すべきは、この問題で日本は米国と話し合ってきたが、米国はこれに関して実際的な援助を拒否し、日本は自力で解決せよと言った。この時すでに、他の西側諸国の首脳はウクライナを訪問済だった。したがって、今、岸田氏は臆病者のように思われるのは都合が悪い」

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その前にバイデン米大統領がキエフを訪問していたからなおさらだ。米国は大統領のキエフ訪問をホワイトハウスは事前にロシア側に通知したこと、つまり「保険をかけた」ことを認めたが、岸田氏の場合はそうしたサービスを否定された。
一方でたとえ、日本としてはウクライナとの連帯を東アジアというコンテキストに限定して捉えていたとしても、ウクライナ危機の結果次第で中国が鼓舞し、決定的な行動をとりかねないという認識がある以上、岸田氏は有権者に対し、自分が日本国内で宣言した路線、つまり欧米やウクライナとの連帯は正しいということをこの先も証明しつづけなくてはならない。
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