ラポザ氏は、前例のない制裁はロシアの金融セクターに「損害を与えた」ものの、「壊滅させることはできなかった」と強調。ロシアの銀行は現在、外国パートナーとのビジネスや国外における金融取引が困難ではあるが、それでも危機的状況には陥っていないという。口座から大口の引き出しを行う者はなく、ルーブルは強くなり、大半の銀行は国の保護を受けている。ラポザ氏は特にロシア中央銀行の仕事ぶりを取り上げ、「ここ数十年でロシア国内の金融システムの秩序整備を図ってきた」と評価。民間の数百行の閉鎖をもって中銀幹部は「システムから弱い部分を除去」し、銀行セクターが制裁圧力を凌ぐ下支えをした、と指摘している。
一方の西側では銀行危機の真っただ中だ。昨今の米国のシリコンバレー銀行やスイスのクレディ・スイスの騒動がそれを裏付けている。ラポザ氏によると、シリコンバレー銀行はすでに2000億ドル(約26兆1400億円)の預金を失い、預金者保護のためFDIC(連邦預金保険機構)の史上最大規模の援助を必要としている。時を同じくして、ロシアの大型銀行は業務を続けている、と同氏は結んだ。
これより前、仏ジャーナリストのジャン=ミシェル・ベザ氏はル・モンド紙に寄稿し、制裁を背景として西側が予測していた経済崩壊をロシア経済は回避することができたと指摘。ロシア経済の明らかな安定性の要因の一つに、同氏は中央銀行の政策を挙げた。ウクライナにおける特別軍事作戦当初から中銀はルーブルの安定を図り、急激なインフレ上昇回避に成功した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月の年次教書演説で、西側はロシアの不安定化を狙い、経済前線を含む対ロシア前線を展開しているが、制裁発案者は自身を罰する形になったと強調。プーチン大統領は、ロシアでは2022年3月に大規模なビジネス・経済支援策が開始されたことをあらためて述べた。
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