理想的な実験環境
ISSでは重力の影響によって地球上では基本的に不可能な実験を行うことが可能だ。例えば、無重力環境で理想的なタンパク質結晶を生成することができる。2022年3月、ロシアの宇宙飛行士、デニス・マトベーエフ氏は、特別なバイオ3Dプリンターでコロナウイルスのタンパク質を結晶化させる一連の実験を行った。得られた結晶はコロナウイルスを研究して治療薬を開発するために地球へ送られた。
宇宙では先端技術の開発も行われており、それはのちに地球上で積極的に活用されている。例えば、ISSのロシアセグメントでは宇宙飛行士の尿やISS内部の空気から除湿時に回収した水を飲料水としてリサイクルする水再生システムの実験に成功した。このような水は深井戸水よりもきれいで健康によく、乗組員に飲料水・調理用水を十分に提供できることがわかった。現在、同じような水再生システムが地球の乾燥地帯で使用されている。
地球の研究
宇宙飛行士はISSで定期的に地球のリモートセンシングを行っており、その作業は地球を常時観測するために特別につくられた数十の衛星を用いた作業よりもはるかに効率が高い。衛星が実行するのは地上から送られた特定のコマンドのみであり、その後、データが地球に送信されて調査が行われるが、それには何時間または何日もかかる。一方、宇宙飛行士は軌道上に滞在しているため、リアルタイムで地球の表面や大気の変化を記録することが可能。これによって異常気象や地震、人災を予測することができる。
放射線防護開発
ISSのおかげで放射線防護に関する科学的なデータ量が年々増えていえる。また、深宇宙の放射線は地球近傍よりも強いが、ISで収集されたデータによって最も効果的な放射線防護策を模索することができる。この経験はチェルノブイリ原子力発電所における事故処理作業で生かされたように、地球上でも用いられることがある。当時、宇宙放射線の影響と人体防護に関する論文の審査を受けて合格したロシアの宇宙飛行士、エフゲニー・フルノフ氏が救助作業に参加した。
月や火星への飛行に向けた演習場
ISSで宇宙大国は月や火星への深宇宙探査のための科学的な経験を得ることができる。深宇宙探査のために時に数年間にわたる長期的なミッションが行われており、そこでは人間が長期飛行に耐える能力がテストされたり、着陸直後の人体機能の特性が研究されている。
スプートニク通信は先に、ロシアは2028年までISSの運用を延長する可能性があると報じた。
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