流出文書によると、トルコはこの計画について把握しており、「反撃を恐れていた」ことから、自らが支持する武装勢力の展開するシリア北部、北西部ではなく、敵対するクルド人勢力が展開する地域からロシア軍に攻撃することをウクライナ側に提案していたとのこと。報道によると、ウクライナ軍の攻撃計画は1月23日付けの機密文書で詳細に記されているという。WP紙によると、ウクライナ側はこの攻撃によりロシア軍に損失を与え、部隊の配置換えを行わせることが目的だった。
ウクライナ国防省中央情報管理局はこの攻撃を策定するにあたって、正規軍が直接関与しない形で実行できるよう、ドローンによるピンポイント攻撃を想定していた模様。また、作戦実行にあたっては米国が支援する武装組織「シリア民主軍」(SDF)を訓練して動員することも検討していた。
流出文書によると、SDF側はウクライナ軍の作戦を支援する代わりに、地対空ミサイルシステムの供与や使用方法の訓練を受けることなどが合意されていた。また、SDF側はクルド人が暮らす地域に展開するロシア軍には攻撃しないようウクライナ側に要請していたという。ただし、SDFのファルハード・シャミ広報担当者はWP氏の取材に対し、国防総省の文書は捏造されたものであり、SDFはウクライナ危機に関与していないと主張している。
報道によると、ウクライナ軍は11月、この計画を遂行する上で、SDFの管理地域における輸送上の問題や、作戦本部の設置を巡る問題に直面した。そのためゼレンスキー大統領は計画を断念せざるをえないとの判断に至り、ウクライナの諜報組織は2022年12月29日頃にはこの意向を把握していた。
計画中止に至った要因として、WP紙は米国側からの圧力、保有するドローン不足、作戦に対する不信感、さらにはロシア側の諜報部隊による「成功」が指摘されている。WP紙によると、米国またはトルコの支援を得ることなくウクライナ軍がシリアに展開するロシア軍に攻撃しても、成功はありえない。また、仮に米国がこの作戦に関与していることが明らかになった場合、ロシア側は米国が管理するシリア東部で然るべき対応を行うとの懸念もあったとされている。
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