「今回の岸田首相のアフリカ歴訪は、地理的にアフリカの北、西、東を網羅するものです。わたしが思うに、今回のアフリカ歴訪には2つの大きな目的があります。一つ目は、今年G7の議長国を務める日本が、自分たちの国がこの役割に見合った存在であり、日本が国際社会全体の問題に関与していることをあらゆる手段を使って示そうとしているということです。アフリカ諸国は伝統的に、世界の主要な国々がその発展に向けた支援をおこなっている『グローバル・サウス』の一部とみなされています。
エジプトへの出発を前に岸田首相は、国際秩序の基盤の強さが試されているときに、主なアフリカ諸国のリーダーたちとの協力関係を今一度確認することがいかに重要かについて発言しています。また今回のアフリカ歴訪は、近く開かれるG7広島サミットの枠内での発言をより活発にするものです。こうした意味において、岸田首相は、アフリカで、日本の首相としてだけでなく、責任ある国際社会の人物として、また共通した地政学的見解とアプローチを提唱するG7全体の代表として協議を行っているのです。
これがエジプト、ケニア、ガーナ、モザンビークの指導者たちに影響を及ぼすかどうかは、おそらく、岸田首相の雄弁さや説得力だけでなく、国際関係、外交におけるいわゆる『リアルポリティーク』に対する彼らのビジョンにかかっているのではないかと思います」
一方、ガーナと日本の間では、この国にとって非常に重要な分野での協力関係が発展しつつあります。日本はインフラ整備、医療センターの設立、保険・教育システムの発展、労働力の教育などに投資をおこなっています。1月にはガーナ共和国とウクライナの間で、食物の保管のための輸送ハブを創設する合同プロジェクトについて協議が行われました。日本の首相が今回の訪問の中で、その実際的な実現に協力について発言したかどうかは、日本の「穀物問題」に対する考えの指標となるかもしれません。
モザンビークは天然資源という見地から見て、大きな利益となりうる国です。日本の企業はこの国での液化天然ガスプロジェクトに参加していますが、これは日本にとって戦略的な意味を持つものです。しかしながら、モザンビークの指導者との協議では、モザンビーク沿岸警備隊の日本への派遣など、より広い議題が取り上げられる可能性もあります」
「これは、アフリカにより有意な協力の条件を提示している中国との大々的なゲームであるだけではありません。またこれは、日本が、産業、エネルギー分野、保険、社会的なプロジェクトの発展に向けた支援に基づいた長期的な協力関係を築きながら、伝統的にアフリカに対して適用してきた『ソフトパワー』だけでもありません。
これは、日本のより大きな自由に関係する新たな方向での動きが始まっているということです。自国の安全強化の枠内で、強い日本は米国にとっても有益なものだというコンセプトに基づき、日本は国際舞台においてますます積極的で、独立したプレーヤーであるという立場に立つことが多くなっています。そしてこの傾向はおそらくより強まっていくでしょう」