「バイデン大統領は合衆国憲法修正第14条を発動する可能性については慎重な発言を行っています。これは議会を関与させずに、大統領府によって公的債務を履行するというものです。この修正が発動されたことはかつて一度もありません。これを発動した場合、支払い、税収、証券の売却など、連邦政府のすべての義務が遂行されることを意味します。
しかし、状況はもはや財政問題でなくなり、大統領の弾劾訴追にいたるまでの政治的・法的な分野で予測不能な結果をもたらします。今週金曜日に、なんとかしてデフォルトを回避するために、バイデン大統領、マッカーシー下院議長、マコーネル上院院内総務が再び協議を行うことになっています。そこで合意が得られなければ、その期間がどのようなものであれ、ドルの下落と世界的な不測の事態が起こるでしょう。またそれにより、日本や多くの国が米ドルへの不信が起こり、株式市場では、世界経済の停滞を予想したパニックが生じるでしょう」
「我々は、米国がデフォルトに陥る可能性はきわめて低く、ゼロにかなり近いと考えています。しかしながら、そうなる可能性がゼロだとは考えている訳ではありません。過去10年で、米国の債務は8倍、過去30年間では10倍にも増えています。つまり、米国の債務はこの10年で、年間平均6%のペースで増加しているということです。そしてこの米国の公的支出が常に増加すれば、また新たな債務を必要とするため、このような動きはいつか止める必要があります。逆に、もし米国が支出、すなわち債務を増やし続ければ、実際、少なくとも技術的なデフォルト、つまり期限内に支払い義務を履行できなくなる状況となるでしょう。1979年にこうした事態に陥ったことがありましたが、それは期間としてはそれほど長くなく、技術的なミスによるもので、その影響は短期間で取り除かれ、世界経済への影響はありませんでした」
「もし実際にデフォルトに陥った場合、米国債の最大の保有者は大きな打撃を受けるでしょう。それは、日本、英国、ベルギー、中国などです。もっとも、中国は、少しずつ、米国債の保有高を減らしています。おそらく、リスクが高いものだと捉えてのことでしょう。
2022年末の時点で、日本は米国債の最大保有国で、1兆763億ドルで、全体の3.7%を占めていました。もし米国がデフォルトを宣言すれば、米国債の価格は暴落し、GDPの規模を上回る日本の債券を含め、リスクの高い債券を避ける動きが世界中で始まるでしょう。米国やその他の国のリスクの高い債券の資金は不思議なことに米ドルに流入します。もしデフォルトが技術的なものであれば、問題はすぐに解決されます。
しかし、もし米国が債務履行を拒否すれば、その影響はドルにも及び、大暴落する可能性があります。そして米国経済は長期的に景気後退し、米国の最大の貿易相手国である中国や日本の経済にも否定的な影響を及ぼすでしょう。そうなれば、世界経済の成長率の鈍化、あるいは低迷を招くことになるかもしれません。しかし、そのようなシナリオとなる可能性はかなり低いと我々は考えています」