長年にわたる日本滞在の後、短期間韓国やモスクワで働いたが、ロシア正教会でのトップであるキリル総主教の命を受けて、北オセチアへの派遣が決まった。コーカサス地方自体、30年以上も訪れていなかったため、まったく思いがけないことだった。しかし「すべては神の意志」と受け入れ、新天地にわたった。周囲の人からはこの転居について「サムライからジギットだね」とジョークを言われた。ジギットとは、コーカサス地方において馬と武器を使いこなす武士のようにタフな男性のことだ。
ゲラシム大主教は、東京で働くうちに、日本語をゼロからマスターした。地元の人の言葉で礼拝を行うのが非常に大事だという信念からだ。東京・神田駿河台の復活大聖堂(ニコライ堂)では日本語で礼拝を行っていたほか、モスクワでも、日本に正教会を伝えた聖ニコライを記憶するための礼拝を日本語で行った。聖ニコライは1861年に来日し、1912年に日本で永眠している。そして北オセチアではオセット語を勉強中だ。
コーカサス地方は、チェチェン、イングーシ、ダゲスタン、カバルダ・バルカルなどの各共和国で主にイスラム教が信仰されている。そのためイスラム教のイメージが強いが、オセチアにおいては歴史的に正教会が多数を占めている。2022年には、アラニア(北オセチアの別名)の洗礼から1100年、という歴史的なイベントが開かれ、キリル総主教が初めて北オセチアを訪問した。
インタビューでゲラシム大主教は、北オセチアの美しい自然や地域の特徴、日々の仕事、そして第二の故郷でもある日本に対する気持ちを話してくれた。
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