「米国の経済に、国債の上限引き上げを阻害するような理由はありません。あるのは政治的な理由です。国債の上限引き上げに関する協議における共和党と民主党の取引は、下院の大半を占める共和党がバイデン政権を影から引っ張り出すというものです。なぜなら近年、経済問題の大半が議会との協議を行うことなく、米政府がこっそり決定され、不法に下されてきたとすら言えるからです。共和党は、バイデン政権、とりわけ、財務省、国務省、国防省を米国の憲法を違反しているとして叩いているのです。
米国がデフォルトに陥る可能性は7〜8%くらいと見ていますが、完全に否定はしません。なぜなら、政治的緊張が高まるなか、デフォルトを、米国の主な競争国の金融危機を煽る金融兵器として利用することができるからです。そして現在は、それを行うための絶好の時です。戦争がすべての債務を帳消しにしたように、グローバルな軍事政治的緊張の高まりを背景に、すべての当事国が新たな地形学的、地政学的構成を作り出そうとするときよりも、これを遥かに容易に、また合法的に行うことができるのです」。
「31兆4000億ドルという高い上限があるにもかかわらず、対外債務は7兆ドルしかありません。残りは国内の国内の債券保有者です。またデフォルトに陥る期限とされる6月1日がきても、すべての債務を瞬時に支払わなければならないということではありません。技術的にこのプロセスは1ヶ月かけて行われます。債務の支払い期日は11日に分散しており、債務額は合わせて1兆円で、その利息の額が136億ドルとなっています。
しかし支払いができるところとできないところがあるのです。そこで、いくつかの国はこのデフォルトの犠牲者になる可能性があります。それは米国が地政学的影響を与えたいと考えている国々です。指摘しておきたいことは、1年前に米国は初めて、凍結されていたロシア国債をデフォルトに陥らせたということです。ロシアを相手にこれを試してみて、米国は今、このデフォルトという方法を、他の国に圧力をかけるための手段として使うことができると理解したのです」。
「もしデフォルトに陥るようなことがあれば、米国は借入しにくくなります。なぜなら、投資の安定性と絶対性に疑問が出てくるからです。そうなれば、投資者は米国だけでなく、中国やアラブなど、その他の債券にも資金を投入するようになります。ですから、米国にとって重要なのは、米経済や米国債の安定性に疑問を抱かせないようにすることです。
わたしがデフォルトの可能性が低いと考える理由は、これを回避するための方法がいくらでもあるからです。まず、公的債務の効力が問われてはならないとする憲法修正第14条を発動することができます。第二に、連邦準備制度(FRB)は何の問題もなく、財政収支を倍増し、すべての対外債務を償還し、この危機に終止符を打つことができるのです」。