スプートニクは東洋学の専門家にドクトリンをめぐる論争についてコメントを求めた。ロシア高等経済学校、世界経済・国際政治学部のオレグ・パラモノフ准教授は、これはドクトリンの遂げた進化的発展の問題だとして次のように語っている。
「もちろん、吉田ドクトリンはもはや時代遅れだが、その課題は日本が経済力を獲得することにあった。そして吉田ドクトリンは成功し、日本人の生活水準は急激に上昇し、国民はこれに満足した。こうして経済が政治に優先したのだが、日本経済が停滞し始めた1990年代になって初めて、吉田ドクトリンはもう時代遅れではないかと言われ始めた。
しかし、経済優先主義は根強く残り、経済安全保障という新たなナラティブへと進化した。地方のインフラ整備、物流、サイバーセキュリティ、通信コミュニケーション、デュアルユース製品を含む投資プロジェクト、付加価値連鎖など、これらはすべて岸田(編集:首相)が得意とするところであり、吉田ドクトリンが進化した形の発展だ」
専門家らの見解は、吉田ドクトリンの放棄はそもそも、米国と結んだ安全保障条約の破棄を意味するが、それはあり得ないとする点で一致している。
モスクワ国際関係大学、東洋学部の学部長のドミトリー・ストレリツォフ教授は、「日本が米国の『核の傘』の下にあり続けるという吉田ドクトリンの大原則はまだ有効だ。これによって日本は軍事費を節約でき、その模範によってアジア諸国における米国中心主義の維持にある程度貢献している」と述べている。
日本の吉田ドクトリンの原則に対する相対的なコミットメントを示すもう一つの要因は軍事費の水準だ。ストレリツォフ氏は、新安全保障戦略で宣言された日本の防衛予算のGDPの2%までの引き上げでさえ、状況を根本的には変えていないと結論づけている。
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