ストームシャドウとは
英政府は5月、ウクライナの反転攻勢を前にストームシャドウの供与を発表した。
ストームシャドウは英国とフランスが共同開発したステルス巡航ミサイルシステムで、射程は250キロメートル以上。重量は450キログラムの通常弾頭を含む計1300キログラムとなっている。この「奇跡の兵器」の1発あたりの値段は319万ドル(約4億6000万円)となっている。現在、製造された総数は3000発を超える。
ウクライナ軍でストームシャドウを運用しているのは、これまでに撮影された映像などから戦闘機「Su-24M」だとみられている。
ウクライナでのストームシャドウの目的と役割
ウォーレス国防相は5月、長距離ミサイル供与について、ウクライナの「自衛能力を高める」と表明。一方で、ここでの問題はストームシャドウがウクライナ軍によるロシア領奥地への攻撃に使われるかどうかだった。
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は今月、ウクライナ指導部は西側諸国から供与されたストームシャドウや多連装ロケット砲「HIMARS」などを使い、クリミア半島を含むロシア領を攻撃する計画を立てていると表明した。
実際に声明の2日後、ウクライナ軍はヘルソン州とクリミア半島の境界にある橋をミサイル攻撃し、橋の舗装が損傷している。この際に見つかったミサイルの残骸にあった刻印から、攻撃はストームシャドウによるものだったと考えられている。
コルネフ氏はストームシャドウの有効性に関するウォーレス国防相の発言は、クリミア半島で攻撃を受けた橋のことを念頭にしていると指摘。橋には複数のミサイルが発射され、そのうち1つが着弾したという見方を示している。
「確かにミサイルの能力を示す見事なイリュージョンだ。だが、これが物流網に与えたダメージはいかほどだろうか。第一に攻撃を受けた橋はクリミア半島と本土をつなぐ動脈の1つに過ぎない。第二に、損傷は受けたものの橋自体は残っている。この例だけではない。ストームシャドウはその他たくさんの場所で使われているが、大きな役割は果たせていない」
英国が供与したミサイルが紛争の「突破口」とならなかったことを示す一番の証拠は、ストームシャドウが導入されてから行われたウクライナ軍の反転攻勢そのものにあると、コルネフ氏は続ける。
「ウクライナ軍が反転攻勢開始を宣言したとき、事前に一連のミサイル爆撃の試みが行われた。ストームシャドウも使われたが、結果は出ていない。つまり、ストームシャドウは期待していたほど有効性がないか、使用に関する体制に問題がある。もしくはウクライナ軍の反転攻勢に関する全ての問題が現在に至るまで空転していることから、重要な成果を出せていないということになる」