共同通信などによると、報告書では処理水放出による人や環境への放射線の影響は「ごくわずか」と指摘されている。岸田首相は今後、報告書の内容を踏まえ、夏頃としてきた放出時期を最終判断する。
岸田首相は会談後、IAEAから「処理水の排出が国際安全基準に整合的であること、人及び環境への放射線の影響は無視できるほどであること」の説明があったと明らかにした。そして、科学的根拠に基づいて国内外に対して透明性のある丁寧な説明を行うと強調した。
また、グロッシ事務局長は会見で、「包括的で中立的、科学的な評価が必要。そのことに自信を持っている」と述べた。そして、懸念する周辺諸国に対しては「客観的な答え」を提供すると約束した。
汚染水と処理水
事故後の原子炉の冷却に使用した水は、放射性物質で汚染される。この「汚染水」をALPS (高度液体処理システム)で浄化し、約62種類の放射性物質を取り除いたものがいわゆる「処理水」だ。だが、ALPSでは放射性核種であるトリチウムの除去はできない。トリチウムの濃度を国際的な基準より低い数値にまで下げた水を海洋に放出するのが今回の計画となっている。
東京電力によると、タンクに貯められた処理水の量は6月29日時点で約133万トン。原発の廃炉作業に合わせ、30年ほどかけて放出するという。
科学的知見からは概ね安全性が認められているものの、風評被害も含めた周辺諸国の懸念は残る。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官はこれまでに、「我々は日本政府を非難しているわけではない。放射線の脅威を引き起こす可能性のある行動について通知するよう求めている」と日本側に透明性を求めるロシアの立場を表明している。
スプートニクは処理水の海洋放出に関するこれまでの流れを、時系列でまとめた。
処理水海洋放出、これまでの流れ
年月 | できごと |
2011年3月 | 東日本大震災の津波で、福島第一原発が電源消失。3基の原子炉で事故が発生 |
2021年4月 | 日本政府は処理水の海洋放出を決定 |
2021年9月 | 計画を受け、IAEA特別委員会が初めての調査を行う。その後、約2年間にわたり、処理水が環境に及ぼす影響などを調査した |
2022年8月 | 放出用トンネルの工事開始 |
2023年5月末~6月初旬 | IAEAの専門家チームが、計画の安全性を評価する最終的な調査のため来日 |
2023年6月末 | 放出用トンネルが完成。これを受け、原子力規制委員会が最終的な調査を行い、設備面での準備が整う |
2023年7月4日 | IAEAが計画は「国際的基準に一致する」とする報告書を提出 |
2023年夏~ | 海洋放出開始 |
2053年ごろ | 海洋放出の完了見込み |
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