ブルームバーグによると、米軍が開発しているのは巷で話題となっているチャットボット「チャットGPT」や「グーグルバード」のような大規模言語モデルに基づく高度AIだ。これまで人の手で行っていた情報照会は、電話のやり取りや資料作成が必要だったため数時間~数日かかっていたが、AIを使った実験ではわずか10分で済んだという。
担当のマシュー・ストローマイヤー大佐は、近くこの技術が軍で実用化される可能性があると述べている。
「このことはAIがすでに成熟したことを意味するわけではありません。ですが、我々は実際にそれを機密情報を使ってやってのけたのです」
実用化には課題も
こうした試みの長期的目的は、米軍全体のシステムの更新だとブルームバーグは指摘する。将来的には意思決定や戦場での照準などにもAIのサポート導入を目指す。
だが、実用化には課題もある。AIがハッキングされたり、誤った情報を元に事実とは異なる回答を導く情報汚染の危険性があるからだ。生成型AIは偏見を増幅させ、誤った情報をいかにも真実のように伝えてしまう懸念が指摘されている。
5月にはAI搭載ドローン(無人機)が、実験で敵に見立てた対空防衛システムの代わりに、自国軍側の架空の操縦者を殺害しようとしたと、米空軍報道官が明かしている。ただ、この実験について一部の専門家からは「ソフトウェアシミュレーションが普通のコンピューターゲームのレベルで行われただけの話であり、人工知能には関係していない」と指摘する声もあがっている。
各国で進む取り組み
AIの軍事利用の試みは各国で行われている。
韓国は2027年までに人工知能(AI)を基盤とした技術を軍に導入する計画を進めている。AIを活用した無人自走榴弾砲の操作やドローンの使用を想定しているという。
また、中国科学院自動化研究所の研究チームはこのごろ、戦争シミュレーションのAI「AlphaWar」が、人間の知的活動と区別がつかないほどであるかどうかを確かめる「チューリングテスト」に合格したとする論文を発表した。実験では人間の軍事戦略家が「AlphaWar」と何回もプレイしたが、相手がAIだと特定することはできなかったという。
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