ザハロワ報道官は、ラジオスプートニクの番組に出演したなかでカセム氏の出国を明らかにした。
「刑事事件としての捜査再開を恐れ、カセム氏は機会を利用して出国した。ラトビア政府が彼を『放っておかない』ことは明らかだったからだ」
不当な逮捕
カセム氏はラトビア国籍。スプートニク通信ではモスクワ本社でリトアニア語課の編集長のほか、ラジオ・スプートニクのアナウンサーを務めている。昨年末、がんの祖母を見舞うためにロシアからラトビアに入国したが、数日後の今年1月3日、現地の公安当局に拘束された。4月には出国制限が課せられたうえで、収監先の刑務所から保釈された。
裁判所が発布した逮捕容疑は、欧州連合(EU)の対露制裁に違反し「クレムリンのプロパガンダ資源に経済資源を提供した」などとなっていた。有罪となれば、最長で4年の禁固刑に処される恐れがあった。
ご都合主義の「言論の自由」
カセム氏の拘束は、「報道の自由」を標榜する西側式民主主義の欺瞞を浮き彫りにした。ロシア外務省はこれまでに、「カセム氏の揺るぎのない一貫した姿勢に対する西側の独裁体制からの復讐であり、体制と異なる見解を持つ者へのテロ行為だ」とする声明を発表していた。
また、日本を含む西側メディアは、ロシアでスパイ容疑で拘束された米記者については、「人権侵害」の好例として積極的にロシア批判に利用している。だが、ロシアメディアに所属しているだけで、不当に逮捕・監禁されたカセム氏についてはほとんど報じていない。