走行距離8万キロでも買うロシア人
20年間にわたり日本からロシアへの自動車輸出に携わってきた、在日ロシア人ディーラーのアレクサンドル・コレビンスキーさんは、日本国内の中古車市場は制裁で大きな打撃を受けると予測する。
「特にこれまで日本人は買わず、ロシア人が買っていた車種の販売が大きく低迷することになります。例えば、走行距離8万キロのトヨタ・ハリアーだったら、これまで300万円だったのが150万円になります。半減するのです。ロシア以外の国に輸出もできますが、そうなると5パーセントは相場が低くなります」
コレビンスキーさんによると、日本では保険やメンテナンスなどの維持費用が高く、走行距離が極端に多い中古車は割に合わず、需要が低い。日本では一般的に走行距離が10万キロを超えると買い替え時ともいわれるが、ロシア人は8万キロの日本車なら気にせず購入するという。
行く当てをなくす中古車
特に発売から3~5年と比較的新しく、日本人の感覚で走行距離が多い車の販売先がなくなることになる。中古車として売られた1900㏄以上の自動車や、ハイブリッド車の約3割がこうした状況に置かれると、コレビンスキーさんは予測する。
「日本は自ら発動した制裁で、毎日1億円ずつ失うことになります。日本人自身にとって大きな痛手となるのです。これまで10台に1台がロシアに輸出されていたのが、これからは300台に1台になるようなものです。どれほどの違いか想像できますか?」
2022年の日本からロシアへの中古車輸出は20万台で、全体の約2割を占めた。輸出額でみても約2500億円で、ロシアは日本の中古車輸出額全体の26パーセントを占める最大の顧客だ。だが、制裁発動後にその額は、約60パーセント減の1000億円程度にまで落ち込むとみられている。
つまり、これまでロシアが購入するはずの年間1500億円分の中古車取引が規制されたことになる。日本国内の在庫の増加やそれによる価格低下の影響を考慮すれば、日本の中古車市場全体における1日当たりの損失は1億円では済まないかもしれない。
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