中国人民銀行(中国の中央銀行)は7日、7月に23トンの金を購入したと発表した。中国は昨年11月から計188トンの金を「爆買い」しており、保有する金の量は過去最高の2137トンとなっている。さらに、中国の外貨準備高は7月に113億ドル(1.6兆円)増加し、3兆200億ドル(434.8兆円)に達した。これは多くの西側諸国の専門家が予測していたより大きな数字だ。
国際企業投資コンサル会社「デザン・シーラ&アソシエイツ」のクリス・デボンシャー・エリス代表は、スプートニクに対し、中国の動きは米国債の政治問題化がもたらしうる悪影響から自国経済を守ろうとするものだと指摘。中国は外貨準備をより強固なものにしようとしており、その中で混乱の時代に常に信頼できるリスクヘッジとして機能してきた金準備を利用していると説明する。
「今は激動の時代だ。米国は来年再び債務上限に達し、デフォルトする可能性も否定はできない。格付け会社のムーディーズは米国債の信用を格下げしている。
中国は米国がすぐにデフォルトしないよう望んでいるが、同時に『最悪のシナリオ』に備える戦略もとっている。米国や欧州諸国の国債を日本円やインドルピー、ロシアルーブルなど他の通貨に換金している。この中で金は必要に応じた下支えのためのリスクヘッジとしての役割を担っている」
「デザン・シーラ&アソシエイツ」の経営コンサルタント、ポール・ゴンチャロフ氏は、ドルの国際的信用は「蒸発」し、G7以外のほぼ全ての国が資産を安全に保管するより良い場所を求めて争っていると指摘する。
「中国が懸念する最大のリスクは米ドル資産の凍結だ。米国がロシアに行ったような制裁がいつ自分の身に降り掛かってくるかを注視しながら、少しずつ米ドル資産を金や他の資産に換金する以外に中国の選択肢はない」
同様の懸念は中国のみならず、地球上の非G7加盟国のほとんどの国が抱いている。非ドル資産への転換の動きは、春に14.8トンの金を購入したポーランドのように、欧州の米同盟国にも広がっている。ゴンチャロフ氏は次のように締めくくっている。
「信用が失墜したため、脱ドル化のトレンドは止められない。制裁や凍結などの道具として使われたドルが、本質的に非政治的になることは近い将来あり得ない。そのため、数世紀に渡る実績のある金への逆戻りが生じているのだ」
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