【視点】「結果よりも大事かもしれない」 月探査における日印協力について学者が語る

インドの月面探査機「チャンドラヤーン3号」が世界で初めて月の南極に着陸し、月面探査車「プラギャン」を使った調査が始まった。これを背景に、日本はインドとの月極地探査計画(LUPEX)を活性化する方針。  インドのISROと日本のJAXAが共同で2025年に計画しているLUPEXには、月の南極付近への着陸も含まれている。この場所が選ばれたのは偶然ではない。月の南極には水の氷、つまり月での長期有人ミッションを始動するために必要な凍った水が存在する可能性があると考えられているからだ。  探査車を搭載した着陸機が氷を探索する予定。インドは着陸機を、日本は機器を搭載した探査車と打ち上げロケットを提供する見込み。
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スプートニクは、ロシア科学アカデミー宇宙研究所の主任研究員ネイサン・エイスモント氏に、月探査の主な任務や、なぜ月で水を探すのか、またLUPEXにおける日印協力の見通しについて話を聞いた。

「すべての月探査の主要な任務は、地球と月のシステムの進化を解明することだ。45億年前にある天体が地球に衝突し、飛び散った地球の破片が月になったという仮説がある。

地球上の水はどこから来たのか?氷を含む彗星が地球に水をもたらしたという説がある。一定の確率で、同じ彗星が月に水をもたらした可能性があると想定することができる。しかし、なぜ地球には水があって月には水がないのだろうか?理論的にはそうあるべきなのに。水は太陽や宇宙放射線の影響で蒸発したため、月の表面には存在しない可能性がある。一方、月が存在してから太陽光がまったく当たっていないクレーターには水が存在する可能性がある。水素の発見は月に水が存在する兆候の可能性があるが、今のところ信頼できる情報はない」

エイスモント氏によると、月探査には純粋に科学的な任務と主要な任務の他に、応用的な任務もある。

「人類は火星への飛行を夢見ている。一方、片道だけで8か月もかかる。月ははるかに近く、火星への有人飛行に向けた準備としては理想的な訓練場だ。そのためには月に基地をつくる必要があるが、基地を全面的に機能させるためには、まず水が必要だ。

さらに野心的な任務もある。これはレアアース探査だ。レアアースはエレクトロニクスに不可欠だ。レアアースが月にあるかどうかはわからないが、探す価値はある」

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月のオーブン インドの月探査車が南極部の思わぬデータを地球に送信
エイスモント氏は日印協力を念頭に、宇宙におけるあらゆる協力は大変よいことだと指摘した。

「日本とインドのLUPEXプロジェクトは、両国の研究と飛行にとって最も効率的なコンポーネントを使用しており、これはプロジェクトのコストを大幅に削減している。またこれは、全世界の科学に利益をもたらす。ほぼすべての大規模な宇宙プロジェクトは国際的なものだ。ミサイルはある国が、機器は別の国が、通信機器はさらに別の国が、というように。

トリトン(海王星の衛星)の大気を研究するための国際入札が発表された。誰がより効果的で安価な機器を持っているのかということだ。米国の探査車は最も価値のある情報を探し、それをロシアの装置を通じて地球に送信する。24か国が参加する国際宇宙ステーション(ISS)は見習うべき例だ。先日、スペースXの宇宙船クルードラゴンで米国人、ロシア人、日本人の宇宙飛行士がISSへ飛び立った。私は、このような協力は結果よりも大事かもしれないと言いたい」

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