経済の支柱探し
「ちょうどこの年にいわゆる『プラザ合意』が成立し、米国は日本に通貨切り下げを『強制』しました。この出来事が、この先に起きる日本経済の奇跡の終焉を決定づけたわけです。急激な円高によって、日本の輸出企業は海外市場での競争力を失いました。これで日本経済は徐々に経済大国の特徴を失い、以前の指標を取り戻すことはできず、30年間にわたって停滞を維持したままです。このような状態にありながらも、日本は米国だけを頼りにし続けましたが、今日、突然、米国以外にも支えがあることがわかったわけです。その一例がグローバル・サウスで、これらの諸国はひょっとすると米国よりも頼りになるかもしれないと思い始めたわけです。そのため、日本は『経済の支柱』を多様化しようとしています。米国の同盟国であることに変わりはなく、米国の変わらぬ『政治上のフェアウェイ』でアジアにおける『右腕』でありつづけようとしていますが、経済的なオルタナティブを見つけなければという考えは日本にはあります。これはプラグマティックな選択です」
支えのおかげで自信?
「たとえば、ウラン原産国ニジェールは前政権時はEU通貨に換算すると1キロ0.96ユーロセントで販売していましたが、今は200ユーロです。この差は200倍。以前の価格は西側優位の価格で、EUはニジェールのシェアをかっさらい、最貧国を出しにして自分が富を得ていたというわけです。ところが今は「グローバル・サウス」の国々にも独自の支点が生まれつつあります。これがあるおかげで西側諸国に対して『挑戦』を挑み、同時に効果的に自国を守ることができわけです。かつてはソ連がそのような支点でしたが、今では中国がより大きな支えとなっています」
中国に対抗する日本は経済の「ジョーカー」を演じる?
「グローバル・サウス諸国(まず、東南アジアおよびアフリカ諸国)はかなり急速な成長を遂げています。特にアフリカ経済の目覚しい成長率は注目に値します。日本も当然、この傾向を無視することはできません。加えて日本は、アフリカ諸国との優先的な協力関係を中国抑止の一環としてとらえています。これは日本がこの地域で積極的に推しすすめている政策です。ですから日本は、グローバル・サウスとの関係発展では米国と行動を調整する用意があり、中国に対する対抗手段としてアフリカ諸国に協力を提供すると公言しているわけです。
実は経済面では、日本の立場はいつもいつも米国の立場と同一であったわけではありません。例えば、日本は一時期、東京はイランに対してできる限り関係を維持し、独自の立場をとろうとしてきました。以前の日本は、米国が躍起になってすすめる欧米型の『価値観の輸出』、イデオロギー上のアジェンダ推進に丸ごとからめとられていなかったがゆえに、行動に自由がきいていました。日本は米国が『特別な努力』をせず、日本に圧力をかけないところでは独自に行動しようとしています。でも、重要な問題に関しては、東京は常に米国と外交政策をすり合わせています」