【視点】自民党の改造人事  支持率低下の打開策か、政治のルーティンか?

© AP Photo / Rodrigo Reyes Marin岸田首相
岸田首相 - Sputnik 日本, 1920, 15.09.2023
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13日、第2次岸田再改造内閣が発足した。最新の世論調査によると、政権支持率は約36%、不支持率はそれほど大きくはないが43%と高い。今回の政府指導部入れ替えは、支持率を上げ、岸田内閣の「イメージ一新」を狙ったものなのか、それとも問題はもっと深いところにあるのか。スプートニクはこの決定の理由について調べた。
モスクワ国際関係大学、東洋学部学部長で、歴史、政治、国際関係が専門のドミトリー・ストレリツォフ教授は、現時点では、岸田首相の動機を根本的な理由から正確に評価することは非常に困難だと考えている。

「おそらく、今回の内閣再改造は戦術的なものでしょう。というのも、岸田首相には2025年の次回国会議員選挙までの 『時間軸 』があるからです。つまり、首相にはまだ時間がある。況してや、自民党は衆議院と参議院で安定多数を維持している。首相の支持率は下がったままですが、これは日本ではよくある現象です。どの新内閣も支持率はピークに達した後、下がります。そしてどの首相も、有権者の支持を取り戻すために何らかの行動に迫られる。内閣改造は、国民の関心を 『復活』させ、支持率を上げるための方法のひとつなのです」

ストレリツォフ氏は、内閣に新しい顔ぶれが登場すれば、国民も期待を新たにするからだとして、さらに次のように語っている。

「つまり、内閣改造は実はこの国の政治生活の 『ルーティン的な操作』なのです。特定の閣僚の名前にまつわる様々な政治スキャンダル(『旧統一教会』とのスキャンダル)を含め、国民には常に不満がありますから。岸田首相自身にも、自分の長男が政府公邸で宴会を開くなど、誤算もあります。同時に、この国の経済状況だって国民を満足させるものではありません。国民の実質所得の減少、インフレ、円相場の下落など、これらの要因は間違いなくすべて首相の評価に影響します」

ただし今は、そうした要因の重要性は誇張してはいけない、とストレリツォフ氏は語る。

「確かに、内閣に新しい顔ぶれが現れるでしょう。この政治的ローテションは自民党内の人事制度を維持するための方法でもあるからです。ローテーションによって、岸田首相は徐々に一定のパワーバランスを確保し、岸田氏の命運を左右する複数の派閥内の不満を防いでいます」

ストレリツォフ氏は、つまり、内閣改造で機能しているのは、政府の人事システム内に組み込まれたルーティン的なメカニズムなのだと要約している。

「概して、岸田首相の評価が下がっているのは、『緑の党』が福島第一原発の処理水放出問題で首相を批判しているからです。『左派』は原発全般に反対で、首相がこの問題で抜本的な改革を取らないことを批判しています。『右派』は、岸田首相は外交政策で弱腰で、中国にあまりに『おもねている』と批判しています。

確かに『穏健派』も常に存在していますが、それでも何かしらの不満はいつもあります。それに、日本ではいまだに平和主義的な感情が根強く残っている一方で、今、国の防衛予算が着実に増えています。故に、岸田首相は一見、広島出身の 『平和の鳩 』なのに、いわゆる軍国主義者や右翼保守派の意向に沿った行動をしている、と批判する人もいます。その背後には、連合(日本労働組合総連合会)や立憲民主党を支持する左派勢力がいます。つまり、ある種の抗議の声が確実に存在しています。左派は数こそ少ないものの、確実に存在しているからです」

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要するに、岸田首相を批判する根拠は、右派にも左派にも常にあるとストレリツォフ氏は語る。

「日本維新の会という右派政党が今、台頭しているのは偶然ではありません。 ようするに、その台頭は岸田政権に対する抗議の表明なのです」

日本政府のトップに対する圧力は、両側から一度に押し寄せてくる。そのため岸田首相は、派閥間のパワーバランスを保ちつつ内閣を刷新するという妥協点を探っている。 その一方で、自分に忠実な政治家を多様な基準で選んでいる。
ストレリツォフ氏の弁では、岸田氏サイドでは今、日本の新内閣の大臣構成に関する非常に微妙な作業が現在進行中なのである。
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