チョコレートは犬には危険
私たちの体にとってはごく普通の食品で健康に有益でさえあるものが、犬には中毒を引き起こし、時には命を危険にさらすことがある。チョコレートはまさにそのような食品だ。一体、無害なチョコレートの何がそんなに危険なのだろうか? 危険を呼ぶ犯人はテオブロミンだ。
テオブロミンは、カカオ豆に含まれるメチルキサンチン系の精神刺激物質のプリンアルカロイドの一種。医療では、テオブロミンは気管支肺疾患の治療に使用され、普段の生活では、エナメル質の再石灰化を促進し、虫歯になりにくくするために歯磨き粉の中に含まれている。
つまり、有益な物質なのに、一体そのどこにデメリットがあるのだろうか? ところが、デメリットはある。これがチョコレートの中に使われると、中毒を起こす可能性はあるからだ。ただし、チョコレートに含まれるテオブロミンの量はあまりに少ないため、私たちはこれぐらいの量では中毒にはならない。生体を中毒にするには、その濃度が人間の体重1キログラムあたり少なくとも1000ミリグラムに達していなければならない。ちなみに、ミルクチョコレート100グラムに含まれるテオブロミンは150ミリグラムから220ミリグラムで、これによって人間が中毒を起こすには、体重の半分のミルクチョコレートを食べる必要がある。しかし、犬の場合は違う。
チョコレート
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犬のテオブロミンの代謝はおよそ20時間と人間より遅い。最も毒性が強いのがビターダークチョコレートで、反対に弱いのはミルクチョコレート。甘味を加えたダークチョコレートはその中間。
成犬の場合
犬のテオブロミンの平均致死濃度は1キロあたり300ミリグラム。ただし、大型犬の場合、悪影響は、小型犬よりもはるかに多くのチョコレートを食べないと出ない。体重20キロ未満の犬のテオブロミンの毒性濃度は1キロあたり20~40ミリグラム。
子犬や小型犬の場合
少量のチョコレートを食べてお腹を壊す程度ですむ大型犬とは異なり、小型犬や子犬の場合はより深刻な影響を受ける。極少量のテオブロミンでも、筋肉の震え、発作、動悸、内出血、心臓発作を起こすことがある。
子犬は何でも口に入れてしまうため、チョコレート中毒が起こりやすい。
「どれくらいの量でチョコレートは取り過ぎになるか」おおよその目安
ヨークシャーテリア | 70グラム |
パグ | 140グラム |
ゴールデンレトリバー | 400グラム |
マスティフ | 900グラム |
愛犬がチョコレートを食べちゃった! どうすればいい?
愛犬がチョコレートを食べたことに気づいたら、まずパニックにならないこと。冷静な対処こそ、愛犬の命を助けるために必要。
まず、吐かせる。ただし、これは犬がチョコレートを食べてから1時間以上経っていない場合に限られる。テオブロミンに特化した解毒剤はないため、犬のチョコレート中毒の治療は対症療法となる。
早急に獣医に連絡し、中毒の重症度を判断し、適時に治療を行うこと。
犬のチョコレート食中毒症状
犬がチョコレートを食べてから最初の徴候が現れるのは3〜4時間後。場合によっては、24~36時間後に症状が現れることもある。
症状
嘔吐
下痢
息切れ
動悸
運動失調
興奮、時には攻撃的になる
悪化した場合は痙攣を起こし、時には意識不明になる
犬
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応急手当
家庭での応急処置はチョコレートを摂取して3時間以内の初期段階までなら可能。咽頭反射を起こさせて、毒素が完全に吸収される前に排泄できるようにする。
与えてもいいのは
小さじ1杯の塩または食用炭酸を200~250ミリリットルのお湯に混ぜたもの
ソルベントと飲用水
飲ませた後、なるべく早く獣医に見せる。
治療
犬がチョコレートを食べてから3時間以上経過している場合、獣医は胃洗浄を処方することがある。胃の内容物の排出が間に合えば、予後は良好だが、痙攣、不整脈などの重篤な中毒症状が現れた場合、予後は悪化に傾く。
体内洗浄には吸着剤(プレソルブ、ポリソルブ、エントロスゲリなど)が処方される。場合によっては抗けいれん剤、強心剤、解熱剤などの対症療法が必要。
獣医が容易に診断できるよう、中毒の原因を割り出すための必要な情報は全て提出すること。チョコレートを食べてどれくらいの時間が経過したか、摂取したチョコレートの種類、食べた量、犬の体重など。
犬にとってのチョコレートの致死量
テオブロミンは、犬の体重の1キロあたりおよそ20ミリグラムを摂取すると毒性を示し、興奮、多動、さまざまな消化器症状(唾液分泌、嘔吐、下痢)を示すようになる。1キロあたり40ミリグラムを超えると、動悸、高血圧、不整脈などの心臓症状が現れ、60ミリグラム以上となると振戦、痙攣、痙攣発作などの神経症状が現れる。
犬猫にとっての最低の致死量(体重1キロあたり何グラム、何ミリグラム)
成分 | 犬、体重1キロあたりの致死量、単位はミリグラム |
カフェイン | 140-150 |
テオブロミン | 250-500 |
テオフィリン | 290 |
カフェインとテオブロミンの致死量は、犬の体重の1キロあたり約100~200ミリグラム。これはダークチョコレートで1キロあたり7グラム、ミルクチョコレートで1キロあたり56.5グラムに相当する。体重14キロの犬の場合、100グラムのダークチョコレート1枚と100グラムのミルクチョコレート8枚が致死量となり、それよりも少量の場合は重度の中毒を引き起こす。
犬
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犬用のチョコレートはあるのか?
犬専用のチョコレートやドロップはある。購入前に成分表のラベルをよく見ること。
カカオ豆、砂糖、カフェインが含まれていないか。(キャロブパウダーが代用)。メーカーはカカオ豆は特別加工され(皮むき)、ココアバターとテオブロミンは含有されていないと表示することがある。
パーム油の含有量が多い。(ビタミンの供給源、筋緊張を高める)
レシチンが含有。
こういった成分であれば犬にチョコレート中毒は起きない。
こうした「おいしいもの」の占める割合は食事全体の5%を超えてはならない。これは獣医師も推奨している。犬がお行儀よくふるまったことに対して、ご褒美として与えられるもので、おやつではない。犬がおなかをすかせていても、メーカーが推奨する量を超えてはならない。
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