【視点】拉致問題での日朝の歩み寄りは期待できない

岸田首相は、できるだけ早く平壌を公式訪問したいとの意向を示している。同氏は2023年5月以来、北朝鮮による日本人拉致問題(1970年代から1980年代にかけて北朝鮮当局よって日本人が拉致された)について、「家族の高齢化」を考慮し、金正恩総書記と会談する意思があることを繰り返し表明している。岸田氏は、東京と平壌の間に存在する問題を解決することは両国の利益にかなうとの確信を示している。そして「そのためにはハイレベル協議が必要だ」と考えている。
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2024年2月、北朝鮮側は金正恩氏の妹である金与正(キム・ヨジョン)氏の談話で、北朝鮮は日本との外交接触の拡大には関心があるが、拉致問題を話し合う用意はないことを示した。一方、3月25日には新たな談話が発表され、金与正氏は、拉致問題は解決済みであり、平壌は拉致問題や北朝鮮の核ミサイル計画について議論するつもりはないため、岸田首相の意向だけでは訪朝には不十分だと表明した。
2002年9月、拉致問題に関する初めての会談で、北朝鮮の現指導者の父親・金正日氏は長年否定してきた日本人13人の拉致を初めて認め、謝罪した。なお、日本政府は、少なくとも17人の拉致被害者がいたと認定している。会談後、拉致被害者のうち5人は帰国が許可され、残りは死亡とされたが、遺骨が本物であるかどうかは確認できていない。2014年、両国政府は新たな調査を行い、特別調査委員会を設置することで合意した。一方、2016年、日本がミサイル実験により北朝鮮への制裁を強化した後、北朝鮮は一方的に調査の全面中止と特別調査委員会の解体を発表した。
平壌はこのテーマについて協議する意欲を全く示していないが、岸田首相はいったい何を期待しているのだろうか?ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所朝鮮研究センターの主任研究員コンスタンチン・アスモロフ氏は、これについて次のように考えている。

「日本と北朝鮮がこのテーマについて交渉する可能性は、少なくとも短期的には低い。双方が互いに理解しようとする意欲も同じように低い。両国は自分たちが正しいと確信しているが、相手を納得させるだけの論拠は互いにない。拉致被害者の日本人の親族は、彼らは生きていて、強制的に拘束されており、救出しなければならないと信じている。北朝鮮はかつて日本の調査団を受け入れ、協議を行い、DNA鑑定で真偽が確認されなかったものの、遺骨を日本に引き渡したこともある。しかし現在、北朝鮮はこの問題について話すことを一切拒否している。だが、日本の政治家たちは、社会の要望に応えることが重要であり、そのために努力する義務があることを理解している。

また、日本は自力で北朝鮮に影響を与えようとするだけでなく、他国の支援も得ようとしている。そのため、日本政府は外交レベルで機会あるごとに拉致問題を提起している。2018年6月と2019年2月にはトランプ米大統領(当時)が安倍首相(当時)の要請を受け、金正恩氏との2国間会談で自ら拉致問題について言及した。国連総会や人権理事会のレベルでは、問題の深刻さとすべての拉致被害者の即時帰国に関する決議が何十回も採択された。だが、動きは一切なかった。そして今、モスクワ‐北京‐平壌とワシントン‐東京‐ソウルの関係が悪化する中で、この問題における日朝の歩み寄りには一切期待できない。つまり、行き詰っているのである」

コンスタンチン・アスモロフ氏
専門家
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