この問題を解決するため、先日、日本アイソトープ協会(JRIA)及び日本のその他の企業の代表者とロスアトム代表団との一連の会合が東京で行われた。アイソトープの供給契約締結に関し実質的な交渉を行っているのは、ロスアトムに属する企業「イゾトープ(ロシア語でアイソトープの意味)」だ。この会社の製品は、世界30カ国の100を超える企業、ロシア国内では600を超える企業が使用している。「イゾトープ」は、アイソトープ製品、放射線機器、一般用及び医療用設備の取引において、総合的かつ完全なサービスを提供している。日本には、モリブデン99 (Мо-99)を提供する事になるだろう。これは、がんなどの診断に使われる医療用の放射性物質で、核医学における診断の際、無くてはならないものだ。
ラジオ「スプートニク」記者は、「イゾトープ」広報部のタチヤナ・スロヴャゾワさんに話を聞いた―
「もし我々が、モリブデンあるいはテクネチウムを供給すると言った場合、日本へは、まさに医療用のモリブデンがふさわしいでしょう。原料の供給から、完成品の供給まで、我々がイニシアチブを取る事になると思います。完成品はテクネチウム99mで、がん、心臓、その他数多くの疾患の診断に利用されますが、その減衰(核分裂)生成物がモリブデン99です。我々は又、コバルト60をもとにした電離放射線製品を世界市場に出したいと考えています。この製品は、医療用ではなく、患者さんには直接使えませんが、医療機器を含めた殺菌用に仕えます。我々は大分以前から、すでにソ連時代からアイソトープに取り組んでいます。輸出も、かなり以前から行っています。ソ連邦崩壊後、輸出量が増加しました。国内需要も完全に満たしています。我々は、当然ながら、日本との直接貿易に関心を持っています。なぜなら、その方が、純粋に経済的観点から言って有益だからです。」
化学元素の同位体を用いる学術研究領域は、原子力エネルギー、工業、農業、環境、核医学など実に広範囲に渡っている。アイソトープを用いている、あるいは今後用いる可能性のある分野は、今後どんどん広がるだろう。まして、一連の科学的・応用問題を解決する効果的な助けとして、アイソトープが利用される領域が、毎年ますます拡大しているから、なおさらだ。
放射性核種の診断のおかげで、危険な疾患を早期に発見できるようになる。つまり、何千人もの人々の命を救う事ができる。現代の核医学における診断の何と80%以上が、他ならぬモリブデン99の助けを借りて行われている。核医学にとってカギを握るこのアイソトープ、モリブデン99を使っている世界の人々を100とすれば、その割合は米国人が50、欧州人が30、日本人が10、残りの国々が10といった分布となる。なお現在、世界で生産されているモリブデン99の大部分は、ベルギー、オランダ、カナダ、南アメリカそしてロシアの原子炉で作られている。 核医学用のアイトソープの生産に、オーストラリアと米国も取り組む意向だ。来年2016年には、この両国でもアイソトープの生産が開始されるだろう。
ロスアトムのアイソトープ・コンプレクスは、世界最大級のものとみなされている。そしてロスアトムは、特定の放射性同位元素について言えば、唯一の生産者だ。日本は将来、ロシアからそれらを買入れる可能性を検討し、他のアイソトープ製品も買う事になるのではないかと期待されている。原子力の平和利用領域で肯定的な合意ができれば、ロシアと日本の協力発展に新たな刺激を与えるだろうし、両国の経済的絆を拡大し活性化する助けになるに違いない。