日本の軍人を外国に派遣するためには一連の条件を満たす必要がある。たとえば、日本と近しい関係にある国が軍事攻撃を受けた場合、紛争の経過が日本自身を脅かす場合などである。その上、武力の行使は「最小かつ必要な範囲で」行われねばならない、とされる。また、国連の承認を受けたオペレーションの枠内で、他国の軍隊に、弾薬の提供など後列支援 を行うことが出来るようにもなる。
安倍晋三首相は東京の記者会見で、法案が閣議決定されたからといって、日本が戦争に巻き込まれる可能性が高くなったわけではない、と述べた。自衛隊の権限拡大は、「国民を守るために」必要だった、とのことだ。「日本をとりまく地域の安全保障環境は依然として不安定である」「日本はこれまでどおり、あらゆる紛争を平和的に解決することを是とする」と安倍首相。では、新法案は何をめざすものなのか?高等経済学院のドミートリイ・ストレリツォフ氏に聞こう。
「言うまでも無く、中国というファクター、そして、北朝鮮というファクターがある。しかし、このことをリージョナルな脅威とのみ関連付けるとしたら、それは正しくないだろう。日本の防衛ドクトリンはその性格そのものを転換させた。思い出そう。2010年の時点で、機動的防衛というコンセプトが採用されていた。軍の構造全体に、状況に応じて変化をする、柔軟なアプローチをとることが決められた。刻一刻と変化する状況の中で素早くかつ効果的に反応をとることを目指すものだった。具体的には、戦力を分散させ、その機動性を大幅に高め、潜水艦隊を増強し、米国の参加のもとにMDシステムを強化し、「北の脅威」撃退のためにその昔構築された歩兵基地・装甲車基地を削減する。今度の新法もこれに連なるものだ。これら全てのことの目指すところは、最小の出費で、最小の力で、最大の効果と、千変万化する脅威に対する適応性を担保することだ」
自民党と公明党からなる連立与党は衆参両院で大勢を占めている。国会の承認が得られることは必至である。一方、NHKが今週発表した世論調査では、新法の意味を「よく分かっていない」国民は全体の49%に及んでいた。米国との同盟の枠内で防衛能力を増大させることに「反対」な国民は50%ときている。今後も「私たちを戦争に巻き込もうたってそうはいかない」「平和を守れ」「平和憲法の精神を保とう」等々のプラカードを掲げた抗議行動は続く、ということだ。