ところが当の仏では、こうしたアプローチは信頼を損ねるものであり、将来、ロシアにとって高くつくことになるという声がますます上げられる様になった。そうした中、フィヨン元仏首相はロシアにヘリ空母を供給しなければ仏は経済的、政治的過ちを犯すことになるという声明が表された。ロシア国内では「ミストラル」をめぐるいざこざを分析する限り、この契約は実現しないほうが得になるという見解が高まっている。
戦略景気センターのイヴァン・コノヴァロフ所長は、まず、ロシアの軍事的課題が仏のそれとどこが異なるのかを忘れてはならないとして、次のように語っている。
「もちろんヘリ空母は必要な船だが、それよりも司令本部船となれる多目的船について語る必要があるだろう。ミストラルの問題はこれが多目的船ではあることから生じたが、これは遠洋で作戦を行う用の船だ。仏はそうした作戦をアフリカで行っている。アフリカは元仏植民地が多く、仏の影響が残っている。ロシアにこうした規模の船が必要となることはおそらくないだろう。部隊の配置換えも本部船もそのなかの野戦病院もこうした船は独立したユニットとして必要不可欠だ。これに加えて潜水艦に護衛され、本国からはるか遠い場所で作戦を行うわけだが、そうした関心はロシアには全くない。
「ロシアの軍事産業複合体はこうした船を作ることが出来る。問題はこうした船をロシアは作ってこなかったことにあった。こうした課題をたててこなかったからだ。契約が現れるまで、契約の話が持ち上がるまで、ロシアの軍産複合体でこうした船を作る必要性については誰も取り上げなかった。今やもちろん状況は変わった。もしこうした船を作るとすれば、仏の船とは著しく異なるものになるだろう。」
しかも忘れてはならないのは、それぞれの国は自国の課題をまず解決すべきということだ。まさにこのために「ミストラル」はそれがどんなに美しいプロジェクトであったとしても、ロシアの目的には完全に応えるものではなかった。
地政学問題アカデミーのウラジーミル・アノヒン副会長は、ロシアは今や独自の経験も有し、どういった目的でこうした船が作られるのかを理解しているため、この課題に果敢に取り組むことが出来ると指摘し、次のように語っている。
もしロシアにとって「ミストラル」をめぐるこのエピソードが戦略的な教訓になれば、仏は将来、一連のシリアスな問題とつきあたり、おそらくこんにちパートナーである方面との信用問題でも困難が生じるはずだ。仏は自国の政治路線を終始米国の顔をうかがって調整することで、欧州大陸の課題には海のかなたの影響力のある大国にはほとんど関心がない事実をますます忘れるようになっている。