モスクワ国際関係大学、上級研究員のアンドレイ・イヴァノフ氏は演習における第三国が米国であることから、米国は日本と協力し、演習を中国に対抗するプレーに使おうとするのではないかとの見方を示し、次のように語っている。
「アジア太平洋地域における中国の政策の活発化は、尖閣諸島および南シナ海の豊富な資源を有す島々も含め、米国と日本を脅かしている。その反応から、韓国や豪州など、昔からのパートナー国および連合国との関係強化が図られたほか、ベトナムやインドなどを連合国にしようとする試みがある。
軍事演習『マラバル』に日本が呼ばれたことを米国や日本では反中同盟の拡大路線の一歩前進と受け止められていることも除外できない。だが、これによってインドが日米の反中連合に引き入れられるかどうかというと、これは疑問だ。
もちろん日米は、『マラバル』の演習フォーマットが変化したことで中印間に不信感が高まることは歓迎するだろう。ところがインドと中国にとって見れば、今、関係緊張化には全く関心がない。逆に、BRICSで共同作業を行われたことは、両国は合意ができるところを見せ付けた。中印のフィールドはインドが上海協力機構に加盟したため、近いうちにも拡大するだろう。上海協力機構では中印はともに、反テロ、反急進主義、反分離主義など双方にとってアクチュアルな問題で共に作業を行っていく。
二国間に横たわる問題の重みにもかかわらず、中国とインドの政治エリートらは、互いに話し合えば、こうした問題は十分解決できるものであるという認識を持ち始めている。このため、ルーティン的な軍事演習など、こんなささいな理由が中印関係の拡大に脅威になることはまずないだろうと思う。つい最近、中印関係にはようやく、ばら色の将来性が開けはじめたばかりなのだから。
それに日本も米国のやり方に沿い、好機を利用してインドを中国に対抗させようとする必要はない。まず第1にこうなった今、それが成功することはないだろう。第2に、これは日中関係を悪化させるだけだからだ。それに考えても見て欲しい。そんなことが日本に果たして必要だろうか?」