まだ現実の戦争は何ら問題になっていないが、北極に眠る資源をめぐる一部西側諸国とロシアとの間の緊張は、将来的に「氷上の決戦」に結びつく可能性がある。
ロシアは北極関連の協力に対する用意を示す一方で、軍人3万8000人、船舶・潜水艦50隻、航空機110機を動員した大規模軍事演習を行っている。
さらにロシアはここ数ヶ月、米国およびNATOにおけるその同盟国の地域における防衛力を確認した。NATOはまた、「亜北極」演習も行った。しかしそれらはより南方で、また時期的にも遅く、春の終わりに行われたため、北方の諸条件における軍事行動の難しさはあまり明らかにならなかった。
デヴィッド・ナイ氏の意見では、ロシアは北極における戦闘によりよく準備できている。その理由は次のようなものだ。
第一に、ロシアには、米国よりはるかに多くの砕氷船がある。米国が5隻、対してロシアは40隻以上保有している。
第二に、ロシアにはより良い海図があり、経験も豊富である。カナダの北極地帯の海図さえ、カナダのものよりロシアのもののほうが良い。こうした同氏の意見をThe Globe and Mailが伝えている。
米国のもうひとつの難点は、北極に深海港湾がないことである。ロシアには16箇所もそれがある。
さらに、米海軍はこれら難点を認識しているものの、予算が限られており、さらに他のミッションも抱えているため、ワシントンは「北方への転換」を行うことが出来ないのである。