「中国が東シナ海で進める採掘プラットフォーム建設は、政治的意味合いをも持っている。中国の尖閣/ジャオユイダオ周辺海域におけるプレゼンスを誇示する狙いである。いま諸島周辺の情勢は比較的穏やかになっているが、依然として中日関係の険悪化の源泉ではある。両者とも譲歩の意向はなく、中国は何らかの示威行動に出、この地域における自らのプレゼンスを今後さらに拡大する用意があることを示すだろう」
「海から突き出たこのプラットフォームに何らかの現実的な軍事施設を建設しても無駄だ。非常に脆弱だからだ。中国のこれら行動が有する意味は、プラットフォームを建設し、そこで中国の旗を上げ下げし、プレゼンスを誇示することに尽きる。もし軍人が配備されるとしても、そのプレゼンスは形式的なものにとどまるだろう。あるいは何らかのレーダーが建設されるかも知れない。ともかく重要なのは、日本人らに対し、我々中国人はここにいる、これが新しいステータス・クウォだ、我々はここから決して退散しない、と示すことだ。もちろん、これら中国の行動の全ては、日本に対し、尖閣/ジャオユイダオをめぐる領土問題が存在することを認めさせ、この島々を交渉の対象とすることを目的としている。遅かれ早かれそれが達成されるのであれば、中国は自らを勝利者と見なすことが出来る。中国は今のところ、尖閣諸島をめぐり日中の立場が相違しているという点を日本側に認めさせるにとどまっている。領土問題の存在を形式的に認めさせるところまでは来ていない。日本側からその認定が得られるように、中国は定期的に、日本に圧力をかける目的で、緊張を昂じさせる政策をとっている」
「認めないだろう。なぜなら認めれば、非常に深刻な敗北となるから。理論的には、もし日本にとって非常に重大な状況が発生した場合には、日本は認める可能性がある。たとえば、非常に深刻な軍事・政治的危機が発生し、米国からの指示が十分協力でないことを日本が感じとり、さらに、中国との経済的つながりが解ければあまりに大きな損失となることを日本が理解し、一方では日本の国内でナショナリスティックな勢力が立場を弱めた場合には、認めることはあり得る。こうしたすべての条件が整えば、ついには中国が日本に音を上げさせ、両国は新たな合意を結び、日本は対面を保つかわり、領土問題の存在を認め、交渉を行わざるを得なくなるだろう。その後、そうした交渉が始まる。その交渉は、もしかしたら、十年単位の交渉となる。一口に言えば、尖閣諸島そのものは大して重要ではないのである。しかしそれは、日本が新たな現実を認め、中国こそアジア太平洋地域における最重要プレイヤーなのだと認めるよう、日本に圧力をかける道具として重要なのである」
スプートニク:尖閣を発端とする戦争が現実に勃発する可能性はあるか。
「一方当事者のある種の行き過ぎの結果としてのみあり得る。ゲームの渦中にあって、神経を昂らせた揚句、誰かがスイッチを押してしまった場合にのみ。ところでこうしたことは、あり得ることである。とりわけ、日本でナショナリスティックな感情が高まっており、中国でさらにそれが顕著なことを考えれば、大いにあり得ることである。銃撃や発砲があり、血が流されたとき、もはや双方の政府は、それらナショナリスティックな感情の高まりに押され、退くべき方角を失ってしまう、という状況が起こり得る。もっとも、本当のところ、戦争は誰の得にもならないのである。ただ、神経戦における圧迫ということがあるばかりである。そこにおいては、もはや島々などそう重要ではなく、むしろ日本がアジア太平洋地域における中国の影響力に対する主要な対抗勢力になろうとしていること、また日本が米国の忠実な同盟国であることが重要なのである。日本は韓国のように中国と米国を両天秤にかけたりはしない。日本は固く親米を貫いている。中日間の戦略的対立はここからくるのである。そうした対立が解消されたなら、尖閣諸島の問題など相当早く片が付いてしまうだろう。中国は戦略的問題さえ解決されてしまえばあらゆるローカルな領土問題について相当柔軟に振る舞う。中国は妥協する用意がある。しかし今は、戦略的対立という問題がそれを阻んでいる」