菅官房長官は、安倍首相のそうした決定について、議会での仕事が多忙で、日程的に無理だからだと説明している。確かに9月初めに、参議院では、防衛領域での法律にひとまとまりの変更を加えることをめぐる審議の「ラストスパート」が予定されている。一方共同通信は今日「日本は、9月2日あるいは4日の訪問実施を主張していた」との情報を伝えている。もしそうなら、議会での仕事が多忙という説明は、どうしてなされているのか? 消息筋によれば、中国側は、天安門広場での軍事パレードの直ぐ後の3日夕方に訪問するよう提案したが、日中間で合意ができなかったとのことだ。
ロシア科学アカデミー極東研究所日本調査センターのワレーリイ・キスタノフ所長は、ラジオ・スプートニクのインタビューに応じ、安倍首相の北京訪問が実現しなかったことについて、次のようにコメントした―
「今回の拒絶は、若干意外なものだ。安保関連法案をめぐり国会で嵐のような論議が行われているなどは、言い訳に過ぎない。論議は、ずっと前からそうだし、9月半ばまで続くだろう。恐らく何か別の理由で、安倍首相は、訪中を止めたのだろう。日中関係緩和に向けた道を見出すために、彼は習近平国家主席との会談を、だいぶ以前から行いたいとしていたから、なおさらだ。両国関係は、ここ数年、大変緊張している。安倍首相にとって北京訪問は、重要であったはずだ。なぜなら、北京ではプーチン大統領とも会う可能性があるからだ。プーチン大統領の日本訪問には、現在、大きなクエスチョンマークがついている。日本人の目からは、ロシアが南クリルの領土問題に関し、態度を著しく硬化したように見えるからだ。おまけに、韓国のパク・クネ大統領の訪中が明らかになった。安倍首相は、彼女との会談も強く欲している。しかし習近平国家主席とは違って、短時間の会談さえ組織することはできないだろうが…
それゆえ、安倍首相が、ああした決定を下し、訪問を全くやめにしてしまった事は、私にとって意外だ。日本の指導部の内部で、戦いが行われているのかもしれない。中国指導部との関係改善に賛成する勢力もあるが、強硬路線を続けるべきだとする勢力も存在する。後者の勢力は、ワシントンの要求にしたがって行動している。恐らくは、安倍首相が訪問を中止した裏には、ワシントンの圧力があったのではないかと思う。」
米国や多くの西側諸国のリーダー達は、政治的動機によって、北京での軍事パレードを無視している。あべ首相はその中で「白いカラス」になることを望まなかったのだろう。日本の一連のマスコミは、そうした見方をしているが、ロシア科学アカデミー東洋学研究所コリア・モンゴル調査センターのアレクサンドル・ヴォロンツォフ所長も、同じ見方をしている―
「安倍首相の北京訪問中止に対し、当然ながら、残念だとの声が上がっている。実現すれば、言うまでもなく、日中関係改善を促すからだ。現在それは、差し迫って必要とされている。もし何らかの和解ができれば、日中関係における長期に渡る障害の一つである歴史的過去に対する、穏やかな関係に向けた出口が生ずる。
そうした障害は、この地域全体の状況を当然不安定化させている。
一方韓国のパク・クネ大統領は、北京行きを決めた。このことも、考える根拠を与えている。日本と韓国両政府は、米国の近しい同盟国である。もちろん。安倍首相が中国行きを止めた理由はたくさんあるだろうが、言うまでもなく、主な理由の一つは米国からの圧力だろう。しかしここで、韓国政府にも米国から同じ圧力がかかったのではないかとの疑問が生じる。その結果、安倍首相は北京行きを断念し、パク大統領は、北京行きを決めた。このことは、二つの国が、中国と自分の関係について別の対応をしていること、別の評価をしていることを裏付けている。」
スプートニク社説