軍事分析専門家らは、北京の天安門広場で3日に行われた軍事パレードに勝るとも劣らないほどに、この事実に注意を割いている。中国人民解放軍の艦船がベーリング海に思いもかけず姿を現した事も、この海域での中国のパトロール行動がこれまでなかった事も、驚きを持って受け止められている。
新聞「Washington Post」は「中国の軍事艦船グループが、アリューシャン列島からおよそ12カイリを通過した事」を確認した。その際米軍は「中国海軍の艦船は、国際法のいかなる条項にも反しなかった」と認めている。中国側も「今回の航海は、通常のもので、第三国に向けられてものではない」と発表した。しかし中国の艦船が出現する少し前に、アラスカ州をオバマ大統領が実務訪問した事が、この出来事に政治的性格を付与している。
中国海軍の艦船は、すでに大分前から自国の沿岸から遠くの海域を航海しており、特にアデン湾やマラッカ海峡では、定期的に中国船を見る事が出来た。これは、習近平氏が権力の座についた後、彼が取った中国の新しい海洋戦略が反映している。習主席は、自らの発言の中で何度も、中国の経済的利益や国家の安全を保障する上で、世界の大洋が果たす重要な役割について言及してきた。特に注意が割かれているのが、海洋における自国の権利を守る力を拡大する事だ。ここに驚くべき事は何もない。国がグローバルな経済的利益を持てば、必ず政治的利益の拡大や海軍艦隊創設に手を出すものだからだ。
中国艦船のアラスカへの接近は、強力な海の大国を建設するという全体的な戦略のみならず、南シナ海における事件をめぐり米中間にこのところ生じた軋轢にも関係している。米国政府は、中国が南シナ海での自分の領土的主権を強化しようと試みていることを批判し、大洋における艦船の自由航行に違反すると指摘している。その際米国は、この海域の空からのパトロールを続け、軍事艦船もそれにますます幅広く参加させている。米国のカーター国防長官の指示により、国防総省は、スプラトリー諸島の周囲12海里ゾーン内の電子追跡システムを作成中だ。
そうした米国の動きに答える形で、中国政府は「自分達は、国際法を完全に順守しながら、米国沿岸にも姿を現す用意のある事」を示したのかもしれない。またアラスカ沖に中国艦船が出現した事は、北極圏の資源開発に関し、中国は自分達の立場を示す意味もあっただろう。状況は、米中首脳会談での話し合いが、複雑で困難なものになる事を示唆している。中国当局は、明らかに、交渉での自分達の立場を強めようと図っているし、アジア太平洋地域の安全保障に関する妥協的決定模索に米国を促したいと期待している。