高原教授によれば、中国の外交に変化が現れたのは2008年で、この時期に起こったマスメディアの論調の転向、中国国内の価値観の変化、中国共産党内部でどのような対立が起きていたかについて説明した。
2010年以後、日中間では緊張関係が続いていた。しかし高原教授の分析によると、去年から中国は対日姿勢を変えてきた。これには次のような理由がある。去年、軍用機同士のニアミスが2回あり、接触を避けるためのメカニズムを至急構築する必要が出てきたこと、中国経済が深刻に減速したため日本の投資を再度呼び込みたいこと、習近平氏の国内権力基盤が固まった今、対日姿勢を軟化させてもよい状態になったこと、アメリカとうまくいかなくなってきたこと、だ。アメリカとうまくいかなくなったときは、中国の伝統的な手法として、日本の方を向くという。
しかしながら、対日融和の傾向が見られるといっても、中国の船が日本の領海を定期的に侵犯し続けていることについては以前と変わらない。高原教授はこれについて、日本が物理的な圧力に屈することはないと強調した。今後の日中関係は、しばらく協調と対立の時代が続くという見通しを示した。
高原教授は講演の結びに「自分の目で、異なる社会を見てほしい。報道には、多かれ少なかれ偏向がある。自分の本当の気持ち、本当の理解を伝えることが大事」と学生に呼びかけた。
聴講者のひとり、高度経済学院修士課程1年で、中国の内政・外交について研究しているアルチョム・ワレンチノフさんは「中国について学んで6年目になるが、今日の講演でいくつかの新しい事実を知ることができた。中国について全く知らない人にもわかりやすい講演だった。僕たちはこのような講演に参加し、ひとつの物事に色々な見方があるということを知るべきだと思う」と話していた。