シトーリ氏は、今回の安倍首相の発言に関連し、ラジオ・スプートニク記者に次のような見解を語った―
「日本は、経済的影響力を持った国だが、政治的影響力の方は、それほどではない。それは第一に、第二次世界大戦の結果により、米国との関係において、政治的にかなり従属的地位にある事と関係する。北極圏をめぐる世界的なプロセスにおいて主導的役割を演じたいとの声明は、ましてそのルール作りに参加したいとの発言になると、はっきり言ってプロパガンダ的なものである。日本政府は、自分達の抱負を世界に向け宣伝しているのだ。
確かに、現在行われているプロセスを少しばかりリードしたいと望む一連の欧州諸国が、実際存在する。中国もそうだ。しかし、北極海大陸棚に対する自分達の権利を証明する事も含め、客観的な世界秩序や、可能性、パワーバランスを考えれば、北極圏で主導的役割を演じる国の一つは、やはりロシアだと思う。ロシアは、2001年から、このゾーンの問題に積極的に取り組んできた。それゆえ、日本の先端技術をもってしても、日本に残されたチャンスは、極めて小さいと言わねばならない。しかし北極圏開発への日本の参加は、もちろん歓迎すべきものだ。将来日本がそこで、主導的役割を果たすだろうことは、かなり自信を持って言えると思う。」
おそらく、日本自身この事を、よく理解しているだろう。安倍首相が、北極問題における重要なプレーヤーとして、日本は、まず何よりも、科学とテクノロジーを発展させる事、それが日本の最も強力な方向性であると強調したのも偶然ではない。
「ロシアが、北極海沿岸全域にそって艦船サービス用の港湾設備を準備できればすぐにでも、ロシアは、巨大な優位性を手に入れることになる。経費の面でも速さという面でも優れた、極東から欧州へ貨物を運ぶルートを手にするからだ。北極海航路には、スエズ運河もなく、南米南端のフエゴ島沖やマゼラン海峡のような難所もない。この航路ができれば、対抗できるライバルはもうないだろう。まさにそれゆえに、日本政府は、北極圏開発に関する抱負を口にしだしたのだ。しかし、日本のプランが近い将来実現する可能性は、極めて低い。なぜなら、まず日本は、砕氷船団を持っていないからだ。北極圏の諸条件下での作業、そもそも非常な低温下での作業は、想像を絶する。とはいえ確かに日本には、沿岸の浅瀬での有用鉱物採掘に関しては、一定の技術がある。もし日本が、ロシアとの間で、合意に達するなら、まさに大陸棚での採掘に取り組むつもりだろう。なぜなら日本政府は、北極圏開発のプロセスから、当然取り残されたくないからだ。」