「安倍首相は憲法改正を国民全体での活発に議論する必要性として、その理由に大災害など緊急事態に反応するシステム構築の重要性を挙げた。だが憲法見直しが必要なのは、なによりもまず日本が軍事政治上の有事に反応できる可能性を向上させる目的であるのは明らかだ。そうした事態の中心に中国の国力伸張がある。中国が脅かしているのは日本だけではない。日本の軍事政治上の主た同盟国である米国もそうだ。
中国が自国の海域を越えて影響力を拡大しているというテーマは、先日、米国防総省のカーター長官もレーガン記念国防フォーラムで演説したなかで言及していた。だがカーター長官の批判の中心にすえられていたのはやはりロシアで、国際秩序に危険を与えているとしてこれを非難していた。
となると、次のような疑問がわく。今ロシアは、それにロシアと共に中国も、それからBRICS諸国も、一体どんな「原則的国際秩序」に危害を与えようとしているのか? この国際秩序というのがソ連が国際舞台から退いたあとにできあがったものであることは明白だ。秩序の規則は米国で作られる。誰が「いいやつ」で、誰が「悪いやつ」で、誰を支援し、誰を罰せねばならないかはまさに米国で決められる。この罰するというのは「カラー革命」を組織することや時には露骨な軍事的暴力まで手段に使われる。
米国の憤慨は簡単に説明がつく。それはロシアがクリミア、ウクライナ、シリアについて独自の政策を展開し、米国が独占的に世界の運命を決めようとするのを阻んでいるからだ。
だが、この可能性を失うことを米国は望んでいない。米国この可能性を手中にとどめておくためにははありとあらゆる手段で戦う構えだ。米国はロシア、中国で「カラー革命」を起こそうと画策したが失敗した。そして今、カーター国防長官は「軍事的手段」を口にしている。米国は本当にロシア、中国を相手に戦うつもりなのだろうか? カーター長官の最新の声明から、また米国が核兵器の完璧化を図る作業を開始したことから判断すると、どうやら相手は戦いを欲している。しかも米国はこれに支持が得られると期待している。なによりもまず、最初は日本の支持が得られると。安倍首相の憲法改正の試みを、数年前は極めてネガティブに反応したいた米国が今、目を細めてみているのも偶然ではないのだ。