地対空ミサイルシステムの購入については2年あまりにわたり交渉が続けられていたが、トルコ政府は中国をはじめとする外国との交渉を停止し、入札競争を完全に無効化することを決めた。成立すれば、これはトルコとしては史上最大の取引となるはずだった。それが白紙撤回された原因について、トルコの専門家らがスプートニクに語ってくれた。
「 地域情勢の緊迫化を受け、トルコは地対空ミサイルの購入に関する交渉を活発化せざるを得なくなった。中国のミサイルについて至る所で議論がなされる中、トルコは地域の抱える膨大な脅威の前で、孤独感を感じていた。そうなった理由の過半は、シリア危機に関しての、米国との深刻な立場の相違にあった。現在は、トルコと米国のあいだの緊張は、少しずつ解消されていっている。両国の抱える対立点の中で最も鮮明な対立点は、徐々に均されていっている。こうした状況こそが、トルコがもはや自国へのミサイル攻撃を可能な限り早く解決するべき最大級の問題であると考えなくなったことの一因かもしれない。もしかしたらトルコ指導部は、ミサイル攻撃の際にはNATOをはじめとする同盟国が脅威を撃退してくれる、と考えているのかもしれない」とメフメト・アキフ・オクル氏。
加えて、トルコは、期待したほど多量には、中国から武器は供給されないだろう、と自覚したのだ。そうメフメト・アキフ・オクル氏は語る。
政治学者でドゥムルプィナル大学教授のバルィシ・アドゥイベッリ氏によれば、中国からミサイルを買うというトルコの決定には、当初、欧米に対するメッセージが込められていた。トルコはこの入札を利用して、取引を行おうとした。また、欧州諸国に圧力をかけようとしたのだ。
「 このプロジェクトがそもそものはじめから死産の危険をはらんでいたことを指摘したい。最初の時点ですでに多くの不整合が起きていた。交渉は何度も暗礁に乗り上げた。トルコ側も中国側もあいまいなフレーズに終始して、はっきりした声明は全然出さなかった。取引実現の期限は何度も先送りされた。トルコはこの間ずっと、欧米からより妥当な選択肢が示されるのを待っていたのではないか、という感じだった。しかし、欧米からは声がかからなかった。注意すべきは、中国製ミサイルの購入という話が持ち上がった頃の情勢と現在の情勢がかなり大きく異なっているという点だ。今はロシアがシリアで空爆を行っており、ロシアと欧米の関係は極度に緊張していると言うほかない。プーチン大統領はG20サミットに出発する前、声明を表し、米国が続けるMD建設に対しては、ロシアは対抗措置をとる、と述べた。その第一段階として、いかなる対ミサイル防衛システムをも打ち破る攻撃システムを開発する、とのことだった」とバルィシ・アドゥイベッリ氏。