安倍首相は同じマニラの場で、それより少し前に実現したプーチン大統領との会談の内容についてもオバマ大統領へ報告している。 安倍氏、オバマ氏、プーチン氏の特殊な三角関係についてモスクワ国際関係大学、国際調査研究所の上級研究員、アンドレイ・イヴァノフ氏は、次のような考察を表している。
合意しようとするのが期日にとどまらず、日本の対露姿勢もそうであることは明白だ。またオバマ大統領は日露関係の今後に対する自分のビジョンを安倍氏に押し付けようとすることもまた、分かりきっている。プレス報道や専門家らの発言から判断するに、マニラのような息せき切ったようなあわただしさの中ではなく、落ち着いた雰囲気、状況のなかでプーチン大統領に会い、二国間関係のあらゆるスペクトルや日本、ロシア両国ともに憂慮の念を抱く焦眉の国際問題を話し合いたいとする安倍首相の意欲を米政権はあらゆる方法で押さえ込もうとしてきた。日米は今、軍事政治的協力を強化してはいても、対露政策に関しては双方の関心が完全には一致していないことは明白だ。
米国は今、中国と並んでロシアを世界での米国のヘゲモニーを脅かす最たる敵と捉えている。EUや日本のほか、全世界の一連の独立国がするのと同じように、ロシアが米国の方針に従おうはしないことが2008年のグルジアで、2014年、2015年のウクライナ、クリミアで、そして今、シリアで示された。ロシアが自国の国益を擁護するため、つまりこれはシリアに残るソ連の威光を維持し、『IS(イスラム国)』などのテロリストを殲滅することにほかならないが、そのために武器を手に取ると決意したことは米国にとっては好ましくないサプライズだった。米国防総省はロシアがシリアでテロ組織の拠点にミサイル爆撃を行うことを米国を危険に晒す行為と呼んだ。だがパリの連続テロで仏が事実上ロシアのIS空爆に加わると、米国は今まで、ロシアがあたかもテロとの闘争を隠れ蓑に反アサド陣営の軍事拠点を殲滅していると非難していた調子を和らげざるをえなくなった。ケリー国務長官はロシアが空爆しているのはまさにIAである」ことを初めて認め、ロシアを褒めてまでいる。
だがこれは米国がロシアを危険視しなくなったというわけでは全くない。かといってこのロシアの挑戦を米国は欧州で中東で受けて立つわけにはいかない。この2つの地域はテロと難民問題に直面しているため、ロシアとは対立ではなく、協力を必要としているからだ。このため米国の行うロシアとの対立はアジアへと場を移されている。アジアでは米国はすでに中国との完全対立を築き上げている。しかもこうした対立における連合国の主たる役割を米国は日本へと押し付けている。このためオバマ大統領は安倍首相に、プーチン大統領とは一切真面目なコンタクトを取らぬよう説得するか、それとも日露関係を悪化させる路線を押し付けるか、おそらくそのどちらかだろう。たとえば、領土論争の解決をより積極的に図れとか、ロシアにウクライナのことは忘れろ、クリミアも返してやれと言えと助言するか、またはもっと非現実的なことを思いつくに違いない。
こうした一方でロシアでは、対日関係は非常に重要で、日本が対露制裁に参加し、二国間の貿易経済協力の全体量が縮小したにもかかわらず、現在の状態はそう悪くないと評価されている。この関係がこの先発展していくか、それともロシアは極東で代替的なパートナーを探さざるをえなくなるか。これはすべて安倍氏がプーチン大統領の訪日期日を決め、対露関係における日本のアプローチを決める際に、オバマ氏のいうことにどれだけ注意を払うかにかかっている。」