「双方は、この問題に関して、原則的な立場をとっており、そこから退く事を望んでいない。日本は、1965年に国交を回復した際に、第二次世界大戦に関係した問題の全ては、公式レベルで解決済みだとみなしている。そしてこの慰安婦問題に関して日本側は、人道的な問題であり、民間のイニシアチブの枠内でのみ解決すべきだと主張している。例えば、韓国の女性達には、民間フォンドからのお金の支払いが提案された。
しかし韓国は、全く別の、日本側とは逆の見方を取っている。慰安婦問題は、公式に政府レベルで解決すべきであり、謝罪するばかりでなく、国の予算から賠償金を支払えとの立場だ。こうした罵り合いは、さらに終わりなく続くだろう。なぜなら、双方にとってこれはもう、お金や賠償額の問題ではなく、原則に関わる問題だからだ。それゆえ、もし妥協点が見いだされるとすれば、この問題を凍結するしかない。」
「 韓国社会が、このことで大騒ぎになるほど、問題は政治化されている。一方日本のエリートの中では徐々に、新しい傾向が広がってきている。それは、太平洋での第二次世界大戦の結果と、この戦いへの日本の参戦を見直そうとの試みが、多くの側面ですでに見られるという事の中に示されている。そして戦争中『かくも多くの軍隊があったが、日本は、いかなる特別な人道的犯罪も行わなかった』というテーゼがばら撒かれている。そこでは、日本側から南京虐殺の事実見直しの試みも見える。非業の死を遂げた人々の数に対する疑問が出されている。つまり、社会に肝心なこと、あれがジェノサイドであったという事実を忘れさせようとの試みが存在するという事だ。そうした試みは、当然ながら、極めて激しい反応を、中国社会にも、韓国社会にも呼び起こしている。どのような問題解決のニュアンスも、文字通り両側からのルーペを通して見られる時、それは、二つの国の内政上のファクターになってしまっている。
外交官達は、謝罪のための表現を見つけることができるだろうが、問題が高いレベルで政治化されてしまった事が、その解決を妨げている。」