なぜ安倍氏はかくもロシアに意欲的なのか?モスクワ国立国際関係大学のドミートリイ・ストレリツォフ教授はスプートニクの取材に次のようにこたえた。
第二に、北朝鮮の水爆実験発表にちなむ地域情勢がある。日本は北朝鮮に対する取り組みをロシアと共同で行いたいとみている。
第三に、個人的要因がある。安倍氏とプーチン氏の関係と、彼らのコンタクトを基礎とする特殊な環境が、両国間関係にある。日本は快刀乱麻を断つ人間としてのプーチン氏に期待をかけている。つまり、領土紛争において何らかの進展をプーチン氏なら達成できるのではないか、と」
スプートニク:特にロシアの経済状況悪化とロシアが経済援助と引き換えにクリルを引き渡す用意について、期待はどの程度根拠のあるものなのか。
「交換をうんぬんするのは時期尚早だと思う。ロシアの状況はそこまで悪くない。ロシアには備蓄があり、財政的な余裕も、向こう2-3年分ある。状況は悪くなってはいるが、原油価格の下落も永遠には続かない。いつか必ず価格は盛り返す。そして状況は正常化するのだ。いまの危機は投機的性格のものだ。このことを理解する必要がある。つまり、ロシアには、パニックに陥るような理由はないのである。ただ、日本との協力は、ロシアの国益にかなう。それとこれとは話が別だ。日本の、エネルギー資源その他ロシア経済の諸部門に対する長期的投資は、経済・財政危機の被害を軽減してくれる」
「領土問題についてはロシアは譲歩しないと思う」
スプートニク:日本はそれにどう反応するか。それで露日関係が悪くなりはしないか。
「そうした状況がはや数十年続いている。まだどれだけ続くかわからない。ロシアも、柔軟な立場であるとか、平和条約締結のために相互に受け入れ可能な解決を行う用意があるだとか、言いはするものの、ロシア政府内には、国益について譲歩するわけにはいかない、日本は第二次世界大戦の結果を認めるべきだ、との確信がある。ロシアに可能な精一杯の譲歩は、4島のうち2島を日本に譲ることを定めた1956年宣言への回帰だ。日本はこの条件を受け入れられない。よって対話は際限なく長く続く可能性がある。しかしロシアは、この対話は結果よりもプロセスが大事だ、と見ている。対話があれば、露日は他の分野で協力を発展させられるからだ」