イランは石油埋蔵量で世界4位、一部のデータでは天然ガス埋蔵量で世界第1位である。しかも、「アラブの春」その他の政治的変動を経験した中東地域にあって数少ない安定した国である。こうしたことが、イランの、議論の余地なき強みである。
イランへの地対空ミサイル兵器S-300の供給に関する契約は、既に実現の段階である。取引はほかにもあり、今後も生まれてくる見込み。というのも、欧州がイランに兵器を送ることは、おそらくないからだ。欧州がイランに兵器を送るためには、米国の同意が必要だ。ほぼ、欧州のあらゆる兵器が、米国産の部品等を使っているためだ。
イランをめぐり、ロシアの最大のライバルとなるのは、中国である。
1980~1990年、中国は、戦車や戦闘機から高速艇や対艦ミサイルに至るまで様々な兵器をイランに供給していた一大取引相手だった。中国には今も、ありとあらゆるノウハウ、電子戦用システムなど、イランに様々なものを提案できる。このたび中国の習近平国家主席はイランを含む中東3カ国を歴訪したが、このことは、中東という市場において自らの占める場所を決して譲らないという中国の強い決意を示している。人民日報によれば、パン・セン駐イラン中国大使は、「中国はイラン産原油にとっての最大の輸出市場であるばかりでなく、6年間にわたり第一位のイランとの貿易パートナーである」と述べた。「中国とイランの間には多くの共通点がある。主権や国家の独立性を擁護する立場についても、国際および地域関係においてもだ。中国とイランは互いに互いを補っているのだ」と同大使。
日本の安倍首相もまた、昨年9月にニューヨークの国連本部で実現したイランのロウハニ大統領との会談で、イランへの経済的関心を鮮明にしている。「イランへの日本企業の進出を目指し、イランの経済成長に貢献したいと考えている」と安倍首相。一方のロウハニ大統領は、エネルギー、貨物輸送、交通、環境、文化、医療などの方面で具体的な支援を日本に求めた。