主要な左翼過激派組織の一つ革労協(革命的労働者協会)は機関紙の中で、今年の主な課題として「サミット粉砕」の必要性を挙げている。警察当局はこうした脅迫行為を真剣に受け止めており、「革命軍」とよばれる革労協の不法な武装集団が、その目的を遂行するため全力を尽くすものと警戒している。
「革命軍」は、最近では昨年4月、神奈川県にある米軍座間キャンプに向け手製のロケットを発射した。また「革命軍」のメンバーは、東京の横田基地近くで起きた爆発事件についても、犯行声明を出している。日本の警察当局は、伊勢志摩サミットの際、過激派は、米軍基地あるいは自衛隊の施設への攻撃を計画する可能性があると見ている。
過激派組織「オウム真理教」の後継組織であり、麻原彰晃(本名・松本智津夫)の思想を継承する「アレフ」「ひかりの輪」によるテロの脅威が日本に存在し続けていることも忘れるべきではない。
「過激主義は必ずしも貧困と結びついてはいない。現行秩序に不満な人々というのは、いずれの国、いずれの社会にもいる。それは普通のことだ。問題は、暴力的手段を辞さないような人が、多いかどうか、また、彼らが組織を結成できるかどうかである。日本には、大分以前から、過激な左翼集団が存在している。中にはアナーキズムやマルクシズムの影響のもとに生まれたものもある。北朝鮮体制とつながった組織もあった。1950、60、70年代、彼らはしばしば、日本が米国に接近すること等に不満をあらわし、警察との激しい衝突を演じた。のち、過激な活動、暴力路線は低調になり、組織も度重なる改変を経たが、完全に消滅することはなかった」
多くの過激主義組織にとり、重要なのはテロではなく、情報宣伝である、とヴェルホフスキイ氏は語る。
「テロというのは、脅迫の手段である。相手方、たとえば国家権力に対し圧力をかけ、目標達成を目指す手段である。目標は、実に様々なものであり得る。テロリストの要求を履行させることかも知れないし、国家の転覆であるかも知れない。しかし、たいていの過激主義団体は、テロを実行するより、種々の宣言文を執筆することに長けている。『サミットを粉砕する』と書くことは、実際にそれをするよりはるかに簡単だ。そして、安全だ。たいていの過激主義団体にとって、大事なのはテロではない、情報宣伝なのだ。ゆえに、サミットが現実に直面する恐れがあるのは、むしろ大規模な抗議デモだ。デモは騒乱や、最悪の場合、ショーウィンドウの破壊や、自動車の転覆を伴う、大乱闘に発展するかもしれない。だがそれは飽くまでテロとは別物だ」