「安倍首相はロシア大統領にG7諸国の抱く憂慮を伝える意向だ。同時にG7諸国首脳にプーチン大統領の考えを伝える意向だ。安倍首相はこれこそ自分の仲介者としての役どころ、自分の議長国としての意義だと考えている。つまり、ロシアとG7をつなぐ「橋」というわけだ」。谷口智彦内閣官房参与がロシアのマスコミに対して語った。
一連のロシアの専門家が、ロシアは、とりわけ制裁という条件下では、G8への復帰には関心がなく、BRICSや上海協力機構、G20といった機関での協力を重視している、と見ている。
この観点に疑義を呈するのはロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センターのヴィクトル・パヴリャチェンコ氏だ。
「一部のロシアの公人が、ロシアはG8参加に関心を持っていない、という声明を出したのは、私は、それは誇張であると思う。上海協力機構やBRICSへの参加をG8へのそれに対置するのは適切ではなかろう。一定の条件を満たせばロシアはG8という枠組みで西側との対話に復帰することもあるだろう。安倍首相については、彼はロシアとG7をつなぐ「橋」になろうとしていると言われるが、この問題において制裁は言及さえされていない。安倍首相が西側のロシアに対する姿勢を変えられる状態にないことは全く明らかだ。私見では、こうした条件の中で、安倍首相はロシア大統領の眼前でポイント稼ぎをしようとしているのだ。日本ではどういうわけか安倍首相がロシアを訪問すればそれだけでプーチン大統領の平和条約締結および領土問題解決にかける姿勢が軟化する、と信じられている」
ただ、今のところ、平和条約に関して露日の立場は近づいていないようだ。日本政府は平和条約を領土問題解決としっかり結び付けている。ロシア政府はラヴロフ外相の口を借りて、日本との平和条約締結は領土問題解決の同義語ではない、と述べている。谷口智彦氏によれば、にもかかわらず、安倍首相は、プーチン大統領との対話を通じて、両国首脳は互いを理解し、共通の言語を見出すことが出来る、と見なしている。だから安倍首相はプーチン大統領と何度も何度も会談したいのである。ヴィクトル・パヴリャチェンコ氏はそう語る。
中間的な報告では、安倍首相は5月、ロシア南部のソチを訪れ、プーチン大統領と非公式なハイレベル会談を行うということで、合意が得られている。
なお、両国問題の解決策をはじめて示した1956年のソ日宣言調印から、今年で60年となる。