だが専門家らの間では中国自身はアジア太平洋地域の統合プロセスにより積極的な参加を行っているという指摘が挙げられている。これは東アジア地域包括的経済連携の創設も、シルクロード経済ベルト、アジアインフラ投資銀行など、こうしたメカニズムの拡大もそうだ。
東アジア地域包括的経済連携は10+6、つまりASEAN加盟国10カ国のほかにさらに6カ国を足すという公式に基づいて発展している。これはASEAN+3のフォーマットの3カ国、つまり中国、日本、韓国にインド、豪州、ニュージーランドを加えたかたちだ。中国は今のところ米国の発案に真っ向から対立する計画ではないものの、アジア太平洋地域の統合プロジェクトが拡大するにつれ、米中のライバル関係は過熱して行くだろうと思われる。
「TPPという経済プロジェクトが米国によって推し進められたのは、中国が東アジア地域包括的経済連携を作る前のことだ。だからTPPが中国に対抗したものというのは正しくない。TPPはアジアだけに集中したものではないが、その規則はアジアの競争に影響する。2つのプロジェクトの間には間違いなくライバル関係が存在するが、それでもTPPが特定の組織ないしは国家に対抗して作られたものというのは正しくない。」
中国内外のアナリストらの見解では、現段階では、東アジア地域包括的経済連携とTPPはパラレルに存在する事が可能だ。それらの非公式的リーダーである米中が現在、地域の経済協力で本質的な役割を演じている というのがその理由だ。今のところアジア太平洋地域では、統合プロセスの掘り下げ作業は初期段階にあり、米中ともしばらくのうちは地域の貿易投資協力の規則作りに自国なりの貢献を行なおうとするだろう。だが将来的にはこれは米中間の競争激化へとつながる可能性がある。なぜなら米国は中国が首位を占めることを断じて許さないからだ。経済の行方に自信を持っていることが中国の強みとなっている。とはいえ、現在の成長率の鈍化を背景に、中国としては自国のプロジェクトの優位性については、大々的に打ち出すよりはより穏やかなトーンで語るほうをよしとしている。