一回死んでもう一回帰ってきてください~現代美術家・杉本博司氏へのインタビュー

© Sputnik / Anna Oralova杉本博司(すぎもと・ひろし)氏
杉本博司(すぎもと・ひろし)氏 - Sputnik 日本
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3月2日、モスクワにある「マルチメディア・アート・ミュージアム」で、日本の現代美術家・杉本博司(すぎもと・ひろし)氏の展覧会「今昔三部作」が開幕した。

杉本博司氏は、多くの写真作品を制作しており、代表作の「海景」、「映画館」、「ジオラマ」が、今回ロシアで初めて展示された。展覧会は5月8日まで開かれる。

現代のデジタルカメラは瞬間をキャッチし、毎秒数枚の速さで画像を撮影する。しかし杉本氏は、一般的には写真で表すことのできない永遠を表現するために、20分で1枚を撮影し、時に1枚を2時間かけて撮影することもある。

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杉本氏は、8×10の大判カメラを使用し、長時間露光、すなわち非常に遅いシャッタースピードで撮影する。動かない被写体を撮る場合には、まさにこの撮影技術が1枚の写真にあらゆる時間的間隔をおさめることを可能とする。

作品「映画館」で杉本氏は、映画が始まった時にカメラのボタンを押し、映画が終わるまでの2-3時間の間ずっと露光し続けた。そしてフィルムの処理を始めた時、杉本氏は、被写体ではなく、神秘的な白い光が現れているのを発見した。観客は消えていたのだ。

同じくモスクワで展示されている杉本氏の「海景」シリーズは、1980年代に撮影された。杉本氏は海の景色を探して世界中をまわり、エジプトでは紅海、リューゲン島ではバルト海、ジャマイカではカリブ海を撮影した。もし杉本氏がロシアを訪れていたならば、きっと白海を撮影したことだろう。

杉本氏は、通信社「スプートニク」のアンナ・オラロワ記者のインタビューに応じ、ご自身の写真作品の哲学について語ってくださった‐

「写真は真実を撮るというふうに思われてましたけども、杉本作品の場合には、リアリティというのは何か、ということについての写真です。だから『ジオラマ』だとしたら、みんなこれは生きていると思ってしまうんですけども、実はそれは全部死んでるものだったということで、じゃあ生きてるっていうことはどういうことか、死んでるっていうことはどういうことか、ということを考えるきっかけとなる、そういう写真を撮ったわけですよね。人間とはなにか、人間の意識とはなにか、ということを探求している。それをお見せしている。『海景』も、これは新石器時代の人間が見ていた海景を撮っているつもりで撮っています。」

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杉本氏には、「肖像写真」シリーズという素晴らしい作品もある。同作品は、歴史上の人物の蝋人形を撮ったものだ。蝋人形は生きているように見える。スプートニクの記者は、杉本氏はなぜ生きている人間を撮らないのか尋ねた。杉本氏は、次のように語っている‐

「生きている人間は撮れない。というのは露光時間が20分以上なので、生きていると動いてしまうから撮れない。死んで動かなくなってからはじめて撮れる。眠っているときも動きますからダメです。自然はそこにジオラマで一度止められたかたちで撮ってます。この『海景』も、自然といえば自然ですよ。いろんな人が撮ってくれないかと聞きますけれども、一回死んでワックス(蝋人形)になってからもう1回帰ってきてくださいと言ってます。」

杉本氏は、1972年に初めてソ連を訪れている。その時、スターリン時代に建てられた高層建築を目にした。杉本氏は、ロシアではこの高層建築を撮影したらとても興味深いだろうと語られた。杉本氏は、初めてソ連を訪れた時のことについて、次のように語ってくださった‐

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「1972年に来ています。その時はバックパッカーでした。学生で、シベリア鉄道で日本からずっとモスクワまで来ました。まだ学生でカメラは持っていませんでしたが、ソビエトユニオンがどういうふうになっているのかを見たいなと思って来たんです。シベリア鉄道に2日間乗ったところで、汽車が故障して動かなくなって、それからソビエト軍の貨物機に乗せられてモスクワまで来ました。モスクワではインツーリストが泊まるホテルとか全部指示しているので、モスクワのどこか郊外に行きまして、そこで朝起きたら人がいっぱい並んでて、何かと思ったらリンゴが一箱あって、それを皆ずーっと並んで待ってたというのを非常によく覚えています。」

杉本氏は、高松宮殿下記念世界文化賞やフランス芸術文化勲章オフィシェなど世界的に権威のある賞の受賞者でもある。またタイムズ紙とロンドンにある美術館サーチ・ギャラリーの最も偉大な現代の芸術家200人にも選ばれている。

 

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