学者らのデータによれば、この5年間で、福島第一原発周辺の放射線レベルは、65%下がった。この数字は、日本政府が、来年春までに、避難住民の70%の自宅帰還を許可する根拠となった。例えば、東京大学の物理学者、早野龍吾(ハヤノリュウゴ)教授などは「現在、福島県民が受けている放射線量は、年間0,6-0,9ミリシーベルトで、この数字は、欧州よりも低い」と見ている。早野教授は、こうした放射線量の低下について、除染作業が進んでいる事、日本においてはそもそも自然の放射線量が欧州などより低い事などと結びつけて考えている。国際放射線防護委員会(ICRP)によれば、普通の人間が浴びても大丈夫と思われる許容量は、年間1ミリシーベルトである。
その一方で、福島第一原子力発電所の廃炉に向け作業する人達は、福島の人々が日常の生活リズムに戻れるよう、できる限りの努力を続けている。問題は、事故の後遺症を除去し、原子炉を廃炉とするためには40年でも足りないだろうという点にあり、グリンピース・ジャパンなどの組織は「多くの問題が、まだ未解決のまま残っている」と厳しく指摘している。
この3月、グリンピースは「原発事故の傷跡:チェルノブィリとフクシマの後遺症は続く」と題する報告書を出版した。その中で著者達は、数字や事実を使って、原子力発電所の潜在的危険性を証明している。この報告書の著者の1人で、グリンピース・ロシア毒性物質プログラムのコーディネーターを務めるラシド・アリモフ氏は、スプートニク日本のリュドミラ・サーキャン記者の、インタビューに応じ、次のように話してくれた―
「ロシアでは、およそ150万人が、放射能に汚染されていると当局も正式に認める地域に居住している。そこでは人が住んでいる場所は、放射線量は許容限度を越えていないが、付近の森や森で取れる食糧にはまだ大きな汚染が残っている。そのため人々は、今も環境から、つまり外からの放射線を浴び、同時にそこで取れる食べ物を食べる事で、内部から放射線を自分の中に取り込んでいる。その一方で、当局は、環境や社会プログラムを減らしている。それと同じ状況が、日本でも、福島第一原発事故のあと作られつつあるようだ。チェルノブィリと同様、福島原発周囲の森や山には、放射線量が高いポイントが残っている。それ以外に、原発近くの住民居住区での二次汚染の脅威も存在している。我々は、汚染地区の死亡率や罹患率が通常の場所より高い事、児童の発育の遅れや生殖障害が起きており、精神に障害を持つ人も多く出ている事に気が付いている。」
現在、日本にある54基の原子炉の中で、稼働しているのは僅か3基に過ぎない。しかし政府は、住民達の強い反対にもかかわらず、2030年までに35基の原子炉を再稼働させるとの目標を掲げた。この目標達成には、技術的困難もあり、また住民のかなりの部分が抗議活動を展開すると予想される。
その一方で2015年だけでも、日本では、130億キロワット/時の出力を持つソーラーパネルが設置された。これは、鹿児島の川内原発の2つの原子炉の出力と同じである。