ロシアではほぼ全ての温室ですでに水耕栽培が導入されているが、垂直農場の数はまだ極めて少ない。通信社「スプートニク」のアンナ・オラロワ記者は、ロシアの温室での水耕栽培と空中栽培について、チミリャゼフ名称農業アカデミー付属農業ビジネス・インキュベーターの職員セルゲイ・ルプツォフ氏に話を聞いた‐
「水の流れを用いた水耕栽培は、至る所に普及しています。一方で、ロシアで空中栽培に取り組んでいるのは、主にサラダ用葉野菜を栽培しているほんの数社にすぎません。従来の垂直型温室もありますが、まだその数は少なく、恐らく10棟に満たないでしょう。」
モスクワ、サンクトペテルブルグ、その他の大都市には、ずいぶん前に生産を停止した工場がある。これらは町から至近距離に「野菜工場」をつくるのに最も適した場であるように思われる。しかしルプツォフ氏は、そんなに簡単なものではないとの見方を示し、次のように語っている ‐
「例えば、農業複合企業『モスコフスキー』などの大手農業関連企業は、2015年に垂直式の栽培ラックで100パーセント人工光栽培による生産を行う可能性を検討しましたが、主に輸入設備が高額であることや、従来の温室と比べて初期投資が大きいことなどから停滞しています。またドル高の影響で今は若干沈滞していますが、垂直農業の分野は、将来的に発展するでしょう。なぜなら2年から2年半後には投資を回収できるからです。これは温室生産にとっては非常に速い回収期間です。」
ルプツォフ氏によると、有機発光ダイオードのおかげで状況が劇的に変化する可能性があるという。ナノテクノロジーのおかげで数年後にも垂直農場での野菜生産は、農地を利用した農業よりも安価になる可能性がある。ルプツォフ氏は、次のように語っている‐
「従来の白熱電球はエネルギーの6パーセントを光にし、残りが熱となります。発光ダイオード(LED)技術は、20パーセントを光に変換し、残りが熱となります。照明工学分野における最新の傾向は、OLEDあるいは有機発光ダイオードと呼ばれるものです。これはテレビやスマートフォンの柔らかい柔軟性のある画面で使用され始めています。これは将来的な光源です。有機発光ダイオードは、エネルギーの90パーセント以上を光に変えます。残りは熱となります。有機発光ダイオードの効率性は、現在の発光ダイオード(LED)の20倍から30倍です。」
ロシアの学者たちは、例えば郊外の設備の整った都市型小居住区などの小さな範囲で野菜を育てるための理想的な温室をつくるために、設備のテストを行っている。ルプツォフ氏は「スプートニク」に、「私たちの理想は、バイオニック・サイバー温室です。これは自動化された温室で、自己学習する人工知能を搭載したものです」と語った。