今では、商店での盗み、万引き犯の三分の一以上が60歳以上だ。おまけにその多くが、犯罪を繰り返す。中には、前科6犯という人までいる。日本の年金生活者は、支出を控え目にしたとしても、国からもらえる年金より25%も多いお金が、生活費に消えてしまう。
日本では、高齢者による殺人も増える傾向にある。例えば2014年、日本の警察は、自分の夫を毒殺した疑いで、筧千佐子(かけひちさこ)なる女性を逮捕したが、彼女の夫は、結婚してから数か月で亡くなっている。日本のマスコミ報道によれば、彼女は6回結婚したが、夫になった男性は、病気や事故などで次々に死んでいった。この事件の登場人物達の年齢は注目に値する。彼女自身は67歳、直接逮捕のきっかけとなった事件で毒殺された男性は75歳だった。
又犯罪報告の中には、高齢者が詐欺師の犠牲になるといった事件が、ますます多く見られるようになっている。高齢者犯罪は、ある程度、年金生活者が持つ財政状況への不満によって説明する事ができる。彼らは、人生のたそがれ時を迎え、非常に大きな経験を持ちながら、生産のプロセスからも、人生そのものからもはずれ、捨てられたと感じている。
スプートニク日本のリュドミラ・サーキャン記者は、ロシアの犯罪学の専門家オレーシャ・バルスコワさんに、意見を聞いた —
「日本は、(うつ病など)精神疾患に苦しむ人の数で世界有数の国だ。とりわけ現在70、あるいはこの年齢をはるかに超えた人々について話す時、この統計には真実がある。1960年代そして70年代の日本の所謂仕事中毒、1980年代の経済成長は、その世代の人々の一部を、休息したりリラックスしたりできず、仕事なしに人生を楽しむことができない人間に変えてしまった。
年金受給年限を越えると、ある人は旅行に出かけたり、ある人は孫と楽しい時間を過ごしたりしている。またある人は、何もしないで座りこんでいたりするのが嫌で、少しばかりお金を稼ぐために、年金生活者向けの仕事を得ている。中には、消えて行った人生の意義について悲しみ始める人もいる。かつてなかったほど簡単に人生というものに関わっている今の世代の人達と違い、長い間そうした人々は、絶えず飽かずに働き、お金を稼ぐことに慣れてしまっている。ひとことで言えば、生存競争に慣れてしまっている。だから、仕事が無かったり、自分が必要とされないと感じたり、孤独である事は、精神的に辛いのだ。中には人生から今放り出されてしまったのは、自分が悪いのだと考える高齢者もいる。また精神的な変化によって、社会への復讐を決心する人達もいる。時にそうした犯罪には、利己的な動機もある。貧しい一部の老人にとっては刑務所に入る事は、幸いなのだ。夫あるいは妻を殺すという犯罪について言えば、日本では保険金の額が少なくない。その一方で、警察はこれまで、高齢者の死には、特別熱心に取り組んではこなかったといってよい。」
日本における犯罪のレベルが、諸外国と比べ、かなり低い事には、好奇心がそそられる。しかし殺人件数は下がっているものの、老人犯罪の件数は増えている。これは、当局が発表しているように、日本が『高齢化社会』である印、果たしてそれだけだろうか。