「よく知られているようにオバマ氏は、まさに原子力爆弾禁止に賛同したということでノーベル平和賞を受賞している。このためオバマ氏にとっては広島訪問は自分の大統領としてのキャリアの大詰めに挙げられる。これまでにオバマ氏はすでにキューバを訪れており、米国のリビア進攻は誤りだったとする声明も表している。そして今度は広島を訪問することで調停者の役割で歴史に名を残したいと考えているに違いない。こうした歩みは大統領任務もあと数ヶ月という現在の彼の政治プログラムには十分当てはまる。
とはいえ、米大統領が謝罪することはもちろんありえない。ケリー米国務長官も広島視察では詫びの文句は一切口にださず、多くの人命が失われたことが残念だと語るに留まった。それにオバマ氏もおそらく同じような行動にでるだろう。なぜなら米国民は未だに広島長崎の原爆投下は正当な行為だったという考えを支持しているからだ。
実はこんな広島、長崎も日本があの戦争で蒙った悪夢の一部でしかない。東京大空襲など、たった一晩で10万人もの人が殺されており、あまりにも非人間的な空爆だった。米国は焼夷弾で東京のかなりの部分を焼き尽くした。日本の都市の3割から4割が破壊され、民間人に多大な数の死者が出た。
これは野蛮な戦争方法であり、米国はそれに対する責任を負っている。原爆についてはさらに、これを使用する必然性は一切なかった。なぜならばこの時点ですでにソ連の対日参戦については合意がなされており、米国はソ連がさっさと勝利にこぎつけるだろうことはわかっていたからだ。」
「もちろん、日本は許してはいない。多くの人が未だにこの野蛮な原爆投下を未だに忘れてはいない。頭ではおそらく日本が米国との戦争を始めたのだから自分たちが悪いのであり、その結果、高い代償を支払うはめになったのだという理解がおそらくあるのだろうが、それでも支払った犠牲の大きさは、真珠湾攻撃での死者が2300人だったことを考えれば、計り知れないものだ。
それに今、米大統領が広島を訪問すれば、日本国民にとっては大きな象徴的な意味となるだろう。なぜなら今まで広島、長崎を訪問した米大統領はひとりもいなかったからだ。被爆地訪問は米大使らも長い間行なってこなかった。米大使らが視察をし始めたのはここ3年のことだ。
もちろん、米国民も、あまりにも大きな悪い事を行なってしまったのだと理解していることは常に感じられていたが、それでも謝罪を行なうとか、過去の行為を悔やむなどといったことは彼らの頭には一切なかった。
このため未だに米国民の全員がオバマ氏が広島訪問を考えていることをよしとはしていない。異議を唱える者もいる。だがこうした意見もオバマ氏にはどうでもいいようだ。近いうちに大統領職を離れるのであり、キューバ訪問のときもそうだったが、批判にはさほど注意を払っていない。」