ロシアには昔から「良いことのない惨事なし」ということわざがある。悪いことが起きても、必ずそこには良いことも隠されているという意味だ。西側の開始した対露制裁への対抗措置としてロシアが高い質の牛肉の輸入を停止したことが追い風となって、ロシアの国内食肉産業は飛躍的な成長を遂げた。そんな中には日本人が大好きな、あの霜降り肉もある。
「モスクワには『魚ありません』という名前のレストランがあり、実際、日本人観光客、ビジネスマンの間で人気スポットとなっている。この成功の理由は2つある。
1つはもちろん肉の質が高いこと。まずは牧草がよい。それから世界最高の遺伝学で繁殖のための牛を豪州、米国から連れてきている。また飼料の与え方にも秘密がある。とうもろこしを200日間与えることで肉を霜降りにする。その先のプロセスはミラトルグが使うものは最新の方法で最高の国際基準レベルだ。
それだけではない。我々のほうも米国市場への輸出できる準備が整っている。中東だろうと日本だろうと韓国、中国だろうと相手先になる。すでにアラブ首長国連邦には供給を行なっているが、この国の市場には米国、豪州のプロダクトが出回っているにもかかわらず、そうした肉と同等に並んで競争を展開している。
日本のディストリビューターともすでに顔合わせとしているが、彼らは日本のレストランや大規模チェーン、ホテル向けの市場で我々の肉を扱おうとしており、現在認証手続きが終わるのを待っている。日本人自身がこんなことまで言った。ミラトルグの肉を使っているレストラン『魚ありません』で出されているようなステーキは米国でも豪州でも日本でさえも食べたことはないと。」
「魚ありません」はクレムリンのすぐそばにある小規模なレストランだが、ほとんど毎日日本人のグループが複数訪れているため、席は前もって予約しないといけない。こんな人気の高いレストランの出す「ミラトルグ」の肉にJAL航空モスクワ支社が目をつけたのも偶然ではない。JALモスクワ支社は機内サービスに「ミラトルグ」のステーキを出す可能性について東京の本社と交渉を開始した。これについてニキーチン副社長はさらに次のように語っている。
今、ロシア農業監督庁と日本の農林水産省生産局畜産部の間で交渉が積極的に行なわれている。とはいえ交渉は我々の望むようなスピードでは進んでいない。ただし解決策は見出された。最初の試みとして我々の牛肉をJALのモスクワー東京間のビジネスクラスで使う試みが提案された。なぜならモスクワ発の便はモスクワで食料を積み込むため、これについてはロシア側の畜産の監督許可の守備範囲だからだ。
日本人は非常に要求が高い。このためJALのシェフが我々の元を訪れ、農園もえさやりも生産の全工程を視察した。このほか「ミラトルグ」の肉の様々な焼き加減テストが行なわれ、もちろんのこと『魚ありません』レストランも視察された。このテスト、視察期間だけでも半年はかかったが、これでやっとこの夏からモスクワ-東京間のビジネスクラスのメニューにロシア産牛肉が登場することになっている。」