訴えが起こされたのは2013年。中国が事実上、スカボロー礁(中国名:黄岩島)に対する実行支配を開始した1年後。この島はフィリピンから140海里の地点に、つまりフィリピンの主張では排他的経済水域の200海里内に位置している。発端はスカボロー礁付近に8隻の中国の五千が出現したことだった。この漁船の船員らはフィリピン海軍の船によって拘束され、密漁を行なっていたとして訴えられた。
さて今回のフィリピンの訴えだが、注視すべきなのは訴えがスカボロー礁やその他の係争諸島の貴族権には全く関与していない点だろう。訴えは南シナ海といわゆるU字ラインがひかれ、その大半が中国領であることを示す地図が中国で出されたことに集約されている。これは海洋法に関する国際連合条約に即しているかどうかが問題視されている。この訴えの弱点は中国、フィリピン以外にもこの水域の領有権を主張する台湾、ベトナム、マレーシア、ブルネイの考える境界線も全く同様に他国の領土に侵入している点だ。
もしハーグが中国は国際法に違反しているという判決を下せば、国際社会からの批判は間違いなく強まる。ところが中国はいかなる決定も自国の国益を縮めるものであるならば遂行する構えにはない。ひょっとするとフィリピンもまさにこれを計算に入れているのではないだろうか?大して意味のない地点でもせめて一箇所でポジティブな決定をものにして、中国が国際法規に違反しているところを示す、というのが目論みなのだろうか?
1970年代初め、両国は北極の海上の線引きをどこにするかで合意した。ところが島の地位は確定されないまま残された。双方ともが間断なく自国の調査船を島へ送り、自国の旗を立て、抗議の記しを送りあっている。1984年、紛争は新たなレベルに達した。デンマークは旗ざおの下にアルコールのビンを置き、そこに「デンマーク領にようこそ!」というメモを貼り付けた。しばらくたってデンマークは非対称的な報復をカナダ産ウイスキーという形で食らった。それ以来、すでに30年以上もNATO加盟のこの2国は何もない裸の島をめぐって凄惨な戦いを続け、それぞれ相手に対して贈り物を置き土産にすることも忘れていない。