制裁というのは実際のところ、米国の経済システムへ入ることができなくなり、米国の管轄権下にあるような国々での口座が凍結されることを意味する。そして米国の企業や個人は、制裁リストに入った個人や組織と実務的コンタクトすることが禁じられる。米国の官僚達は、生まれつき間違いなど絶対に侵さないとされている国の領袖、金正恩氏を「ブラックリスト」に入れれば、北朝鮮指導部の激しい怒りを呼び起こすことぐらい非常によく理解している。 それゆえ、あらかじめ北朝鮮当局に対し、国内にさらに大きな緊張をもたらすような言動を控えるよう求めた。その際、専門家そして米国の官僚自身、それがシンボリックなジェスチャーであることを認め、制裁が導入されても、対北朝鮮政策に影響は恐らくないと考えている。
制裁導入発表後、北朝鮮は、直ちに反応した。北朝鮮外務省は、米国の行動は「宣戦布告」であり「米国との問題はすべて、戦時の法律により今後決められるだろう」と伝えた。一方中国政府だが、北朝鮮の弾道ミサイル発射に関連して3月2日に採択された対北朝鮮国連制裁決議を支持したものの、今回の米国の一方的な制裁には反対の立場を表した。
ロシアを代表するコリア問題専門家で、現在ソウルのクンミン大学で教授を務めているアンドレイ・ラニコフ氏は、今回の出来事について「北にとって主な要素は、中国の立場だ」と捉え、次のように指摘した-
8日、米国と韓国は、在韓米軍へのTHAAD(終末高高度防衛ミサイルシステム)配備を最終決定したと発表した。遅くとも2017年末までの運用開始を目指すという。これにより、米中の対立はますます厳しいものとなった。新しいシステムは、北朝鮮に向けられたもので中国ではないとの声明が出されても、これは間接的に中国に脅威を与えようとするものだとの疑念は、根拠があると言わざるを得ないだろう。
このところ米国は、中国の周囲の国々、韓国や日本、フィリピンそしてベトナムと協同行動をとってきたが、そのどれもが、中国政府にとって見れば 北朝鮮国内における人権侵害や、自らを「核大国」のリーダとみなしたい金正恩氏の試みなどに比べ、遥かに大きな苛立ちであったと言ってよい。