この事を、韓国の朴槿恵大統領は幾度となく述べ、そのためのモデル、手本として、東西ドイツの統一を挙げてきた。こうしたことは、国の再統一に向けた初めての試みでは決してない。2000年には、宣言書の調印にまで行った。その中で南北朝鮮は、何らかの妥協点を見つけ出すよう試み、和合を目指すことで合意を見た。 しかし「太陽政策」と呼ばれた接近策は、2006年10月に北朝鮮が最初の核実験を実施したことで崩壊してしまった。
最新の分析によれば、南北朝鮮の経済格差は、現在、20倍から40倍とのことだ。北が南のレベルに達するには、少なくとも20年と1兆ドルが必要だと言われている。その際コストは、韓国の国家予算からばかりでなく、国民も支払うことになる。韓国のAsan Institute for Policy Studiesが実施したアンケート調査によれば「統一コリア」を数の上で、韓国の圧倒的多数の人々が支持しているものの、特別の「統一税」導入については、韓国の若者達の間で意見が分かれ、支払う用意があると答えたのは約35%に過ぎなかった。なお同様の調査では、50歳以上の韓国民のほぼ64%は、支払うつもりだと答えている。また統一の時期に関する質問に対し、大部分の人達は、アンケートの中の「状況次第」という項目を選択した。つまり韓国市民は、統一は望みながらも、それは今後先のいつかとして考えている。
一方韓国当局は、統一は必要不可欠であり国民はそれを望んでいるとして、世界各国を説得しようと大きな努力を傾けている。そうした目的をもって、韓国の大統領や外務大臣は今年、北朝鮮と少なくとも最低限の温かな関係を維持しているロシアを含め、一連の国々を訪れ、南北朝鮮統一は、はるか遠くのことではなく、その意味で北朝鮮の体制を支えるのを止めることが最善の戦略だとして説得を試みた。
一方、当然ながら、北朝鮮にも自分達の見方がある。北の指導部は、統一を妨げているのは「帝国主義勢力とその傀儡」だと考えている。つまり、米国駐留軍とワシントンによって支えられたソウル政府が、主に妨害しているということだ。北の考えによれば、南北再統一は、彼らを追い出して初めて、チュチェ思想に則って北朝鮮指導部のもとでのみ可能なのである。
スプートニク日本記者のインタビューに対し、ロシア極東研究所コリア調査センターのエキスパート、コンスタンチン・アスモロフ氏は、次のように述べている-
「南北朝鮮対話の中では、絶えず一方の側が、他方を非難している。一方が、統一を目指し提案などを持ち出すと、他方はいつも、それを無視してはねつける。そうしたなかでは、提案の一部でさえ、現時点では遂行できない。不信という『氷』を解かすことは大変難しい。何十年もの間に蓄積されてきたものを、数年で払拭することは不可能だ。しかし、それが大変困難に満ちたものであったとしても、理論的には統一は可能である。いかなる場合であっても、互いを威嚇しあうよりは、対話の方がより良い。もちろん、外からの影響もあるが、それを過大評価すべきではない。内部的なファクターが演じる役割は小さくなく、大きい。核兵器の存在が、統一をある期間遅らせていることなど、北朝鮮を統治する金正恩氏を心配させてはいない。統一国家の枠内では、彼の政治的未来はないからだ。」