大竹さんの祖父は日露戦争で気管に銃弾が貫通してしまった。不幸中の幸いで命はとりとめたものの、その話は代々大竹家に伝わっていた。ある意味それが唯一のロシアとの関わりで、大竹さんはロシアという国に対して明確なイメージは持っていなかった。大竹さんは婚活にあたり、家族を大切にし、個人主義的な国の人でなおかつ英語のできる人という条件で探していた。まずは東欧圏の人に絞り、結果的に出会った運命の人が、ロシア人だったというわけだ。二人は出会った当初から英語で話し、コミュニケーションに問題はなかった。
どのような時にメンタリティの違いを感じるか、という問いに対して大竹さんは「例えば私は、物事の答えは沢山あると思いますが、妻にはYESかNOの2つの考えしかないように感じることが多いですね。あと、ロシア人同士でしゃべっていると声が大きいので、喧嘩をしていなくても喧嘩をしているように感じます」と述べている。
宗教の違いも二人のハンデにはなっていない。ロシア正教には大斎期間中に食事を制限する習慣があり、肉や魚、乳製品などを食べないことになっている。しかし正教徒でも普段どおりの食事をする人もいて、実行度合いは人それぞれだ。敬虔な正教徒であるエレーナさんは厳格にしきたりを守っているが、子どもにそれを強いることはしていない。将来、自分で決めればよいというスタンスだ。まさにこの点は、大竹さんが結婚相手の条件にしていた個人主義的な部分だ。大竹さんは「妻は私のために日本食を作ってくれますので、感謝しています」と話す。
大竹さん「モスクワ、サンクトペテルブルク以外のロシア人はシャイだと言われていて、日本人男性は心理的に受け入れやすいと思います。ただ、みんな英語ができるとは限りませんから、コミュニケーションでストレスを感じやすい人には不向きかもしれません。ロシアでは男性から女性に花を贈ることがよくあるので、好ましく思っている女性とお付き合いするなら、小さな花束でも、たとえ一輪でもプレゼントすることをお勧めします。日本人女性であれば、デートの時に花を持って歩くことは不便だと思うでしょうけれど。結婚生活において忍耐力が必要なのは世界共通だと思います。私は、妻と喧嘩しても、妻には逃げ場がありませんから、あまりカッとしすぎないように意識しています。」
いっぽう、故郷を遠く離れて日本に来たエレーナさんは、日本の生活に満足しているという。
エレーナさん「日本は清潔な国で、とても気に入っています。人々は教養がありマナーを守っていて、ごみを路上に捨てたりしません。日本に興味をもったきっかけはビーズでした。もともと日本のビーズ細工が大好きで、広島にあるビーズ博物館に行くことを夢見ていました。」
大竹さんの魅力についてエレーナさんは、「夫は、困難なことにぶち当たったときでも、ユーモアをもって物事に接し、決して悲観的になりすぎることはありません。私に対しても子どもたちに対してもとても責任感があり、いつも心配してくれています」と話している。
可愛い2人の子どもに恵まれたことは、大竹さん夫妻にとって一番幸せなことだ。子どもたちは将来の活躍の場を広げるため、ロシア語も英語も勉強している。
二人が知り合うきっかけになった結婚相談所、ロシアン・ビューティーの会の山口昭吉代表は、「それぞれの方の幸せに貢献し、結果的にはそれが国と国との結びつきになっていくということが、この仕事の喜びであり、醍醐味です」と話している。