ロージン氏が断言するところによれば、この構想は米国内でも理解されておらず、米国の連合国らも様々な理由から憂慮を表している。例えば日韓の憂慮は北朝鮮のミサイルに関する状況であり、欧州が懸念するのは核兵器使用分野でこれを「化学兵器、生物兵器の攻撃を抑止する役割を果たす」と考える欧州諸国の政策の食い違いである。ワシントンポスト紙の指摘ではほかの諸国の政権からは米国の核の傘の下にいるすべての連合国にオバマ大統領の宣言がどう影響しうるかについて「自分たちとの協議が行われなかったことに失望の念が表され」ている。これらの国は、仮にホワイトハウスがこうした決定を採択した場合、「北朝鮮、中国、ロシアといった諸国との軍事紛争のリスクは通常兵器を用いた場合でも増大する」と考えているという。
独立軍事政治学者協会に属する専門家、アレクサンドル・ペレンジエフ氏はワシントンポスト紙掲載の記事に不信感を示し、次のように語っている。
「仮にオバマ氏が実際こうした宣言を出したところで新しいことは何もない。『先制不使用』は核戦略のタームであり国家の核兵器使用の拒否を意味するが、国家自体が核攻撃を受けた場合は例外となる。
今は対ミサイル防衛(MD)が出現しているが、このMDは核戦争のインフラだ。合意においてMDというファクターを考慮しないわけにいかない。なぜならこれはまさに核攻撃からの防衛のために存在しているからだ。だがこの問題をオバマ氏は理解していない。
また、仮にオバマ氏がこうした宣言を行ったとしても、ほかの国もこの例に倣う保証は一切ない。NATO諸国の核兵器は英仏にもあるがこの2国は一切の義務を負っておらず、軍縮交渉にも全く顔を出してこなかった。 核兵器はインドにもパキスタンにもイスラエル、北朝鮮にもある。これらの国はどうするのだ?
これが、熾烈化する米国の大統領選挙キャンペーンの枠内で何らかの目的をおうものである可能性も十分にある。それとも政治ではなく歴史上でのオバマ氏のイメージ作り作業なのか。平和を創設した者として歴史に名を残す試みなのかもしれない。いずれにせよ、後世の人間は何の貢献がたたえられてオバマ氏にノーベル平和賞が渡されたんだろうと疑問に思うだろう。」
ジャパンタイムズ紙はロージン氏の記事に関して日本政府代表者らにコメントをとろうとしたが、得られた回答は「米国は様々なパターンを検討しており、現時点では政治的決定はとられておらず、我々も個々のニュースにコメントすることはできない」というものだった。